現場にあった話し合いへ 委員が「集落・地区等境界図」を作成 新潟・胎内市農業委員会

松村孝市会長

 胎内市農業委員会(松村孝市会長)は、同市農林水産課と連携し、人・農地プランの実質化に積極的に取り組んだ。特に、2020年6月に農業委員と農地利用最適化推進委員が、それぞれの担当地域で作った「集落・地区等境界図」がその後の話し合いのベースとなった。

 同委員会は2019年に国から「人・農地プランの実質化」の方針が打ち出された際、同年9月の総会でいち早く「実質化の意義」と「農業委員会の役割」の意思統一を図った。
 人・農地プランはまさに「農地利用の最適化」の実践であり、これまで同委員会が積み上げてきた「地域の世話役活動」を発揮する場であることを農業委員、推進委員が確認して意識を高めた。
 2020年1月には、地域における農地利用などの状況を把握するため、地域農業の将来に関するアンケート調査を実施した。
 地域での話し合いを行うため、アンケート調査結果を地図に落とし込む作業の中で、行政上の区分である集落単位の『大字界』と実際に地域で活動している境界が異なることが明らかになった。集落単位の『耕区の境界』(農家組合などで転作確認や江ざらいなどの共同活動を行う範囲)を明らかにしなければ、現場にあった話し合いができないことが懸念された。そこで農業者の代表である農業委員と推進委員が、現場の営農実態に近い形の境界の素案を作成することにした。
 境界の素案作成に当たっては、農業委員と推進委員が農家組合長をはじめ地域の農業者への聞き取りを行った。複数集落を担当する委員は農家組合長を集めて話し合いを持つなど、積極的に取り組んだ。

 同年10月からは、新しい境界で線引きした集落ごとの農地地図を基に、プランの実質化に向けた話し合いを行った。コロナ禍にあるため話し合いを希望しない集落もある中、話し合いを行った27集落のうち22集落では、農業委員と推進委員が司会進行役を務めながら、農地地図を活用して、より具体的な話し合いを行うことができた=写真。
 これからは「プランの実行」が重点となる。同市は海岸沿いの砂丘園芸地域、平野部の水田地域、中山間地域と農業条件が異なる3地域に分かれており、「遊休農地」「集積から集約へ」「担い手不足」と抱える課題は三者三様だ。実行に当たっては地域の実情に合った対策が必要になってくる。
 今年4月に行われた農業委員会の改選では農業委員・推進委員合計22人のうち9人が交代となった。事務局では、新人委員の研さんと委員全員の意識共有に努めながら、今後の「実行」につなげていきたい考えだ。