都市農地の保全に全力 東京・足立区農業委員会

 都市化が著しい東京23区内にある足立区では、小松菜やツマモノ(刺し身や吸い物などに添える野菜)の生産が盛んだ。同区では、農業委員会(荒堀安行会長)を中心に、減りつつある都市農地の保全に向けた活動に取り組んでいる。

荒堀安行会長

 今年は1992年の生産緑地法改正から30年目を迎える年にあたる。現在、都内で生産緑地地区の指定を受けている生産緑地の80%以上が、農地転用などの行為制限を解除できる期限に到達することになる。この状況を受け足立区では、買取りの申出が可能となる期日を10年延期する特定生産緑地への移行を進めている。2017年に同法の改正により新設された制度だ。本制度を知らずに期限を迎えてしまう生産緑地所有者をつくらないことを目的に、その周知活動に取り組んでいる。
 農業委員会ではこれまで、JA、都農業会議と協力し、計15回の説明会を開いてきた。2019年以降は、特定生産緑地未申請の農業者を中心に戸別訪問なども行い、区内すべての生産緑地所有者の意向を確認した。また、農業委員会だよりに特定生産緑地制度についての特集記事を掲載するなどして、周知の徹底を図っている。
 取り組みの成果として、昨年9月末時点において、今年中に行為制限解除を迎える生産緑地の約90%が特定生産緑地の適用を受ける意向を得ている。

特定生産緑地説明会
千住ネギの栽培授業

 同委員会では、区内農業の魅力発信に向けた活動にも力を入れている。2015年から、区内の小学校で、かつて同区を中心に生産・出荷されていた伝統野菜「千住ネギ」の栽培授業を行っている。児童に農業の大切さや魅力を伝えるとともに、種を下級生に引き継ぐことで命の大切さを学んでもらうことを目的とした取り組みだ。
 昨年は区内6校を対象に、農業委員が各学校2~3人体制で技術指導や圃場の管理、見回りなどを行った。児童は種播きから
定植、土寄せ、収穫をし、調理した千住ネギを味わうところまで、一貫して農業委員の手ほどきで体験する。
 参加した児童からは、「草刈りなど農業の大変さが分かった」「引き継いだ種を下級生に大事に育ててほしい」などの感想が聞かれ農業の魅力を発見・認識する良い機会となっている。荒堀会長は「多くの生産緑地所有者が特定生産緑地を選択し申請したことはよかった。また、栽培授業を通じ、子どもたち自身で育てたネギを食べることの喜びと命をつなぐことの大切さを体験してもらうことで、都市農地の魅力を知ってもらえるとうれしい」と話している。