集積・集約進め集落営農の安定に道筋 富山市農業委員会 宮田好一会長職務代理

 富山市八尾地域の黒瀬谷地区では、経営耕地面積の大部分が、農地中間管理機構からの転貸により(農)KEKに集積・集約されている。2020年まで同法人の組合長を務めた同市農業委員会の宮田好一会長職務代理(74)は、集落営農の合併と農地中間管理事業の活用を先頭に立って進めた。

「KEKが耕作している農地は一本道の両脇に位置しているので、
目が行き届きやすい」と語る宮田さん

 富山市農業委員会(才木隆雄会長)では、中山間地域で懸念されている遊休農地の発生・拡大の防止に努め、農地中間管理事業を活用して担い手に農地を集積・集約することとしている。
 中山間地域にある黒瀬谷地区の経営耕地面積は157ヘクタール。現在、約20経営体が営農している。同地区にあった四つの集落営農組織は1994年から順次協業経営組織に再編した。
 このうち、小長谷営農組合は2010年に農事組合法人として法人化し、名称もKEKに改めた。その後、他の3組織も個々の法人化や合併による法人の設立を検討したが断念し、KEKに合併を申し入れた。
 経営が軌道に乗っていたため、KEK内では合併に難色を示す構成員もいた。宮田さんは、「将来的には単独で事業を継続するのは難しくなるので合併が必要だ」と構成員を説得した当時を振り返る。
 KEKをはじめとする四つの組織は、2014年に合併に向けた協議を重ねた。宮田さんは、「合併すれば、(同年に始まった)農地中間管理事業の機構集積協力金(地域集積協力金)の交付要件を満たし、活用することができる」と説明し、協議を推し進めた。その結果、2015年にKEKが他の経営体を吸収合併し、新たなKEKが設立された。

集積・集約が進んだ黒瀬谷地区の農地

 現在のKEKは、本部と4支店(合併前の各経営体)で構成されており、水稲88ヘクタール、ソバ5ヘクタール、六条大麦3.5ヘクタール、ニンジン0.4ヘクタール、切り花0.2ヘクタールなどを経営している。本部は全体の計画や方針を決定し、各支店は自らの権限で作業を行う。機械や人手が足りない場合は、支店間で融通する。
 当初、KEKが農地中間管理機構から借り受けた構成員の農地面積は53ヘクタールだった。その後、2020年には、農業経営基盤強化促進法による利用権が満了した農地や、同地区の個人経営体が耕作していた農地計64ヘクタールを機構を通じて借り受けた。その結果、経営耕地面積123ヘクタールのうち、95%にあたる117ヘクタールが機構からの借り受け分となった。
 宮田さんは、「黒瀬谷地区のような中山間地域では、小規模な経営体が営農をやめると耕作していた農地が遊休化しやすい。法人の合併により、事業継続に道筋をつけることができた。組合長や農業委員として遊休農地の発生・拡大の防止に努めてきたが、これからも同地区の農地を守り、営農し続けていきたい」と語る。