農地を守り次世代へつなげるために 奈良・御所市農業委員会
奈良県御所市は奈良盆地の西南部に位置し、人口2万4140人のうち65歳以上が約4割を占めている。1300年前から薬の町として栄え、今なお製薬業が有名である。同市の「ごせブランド」に認定される御所芋は長芋と同じ「やまのいも」の一種で、「御所芋焼酎『みかけによらず』」に生まれ変わる。この他、甘柿の原種ともいわれる「御所柿」や珍しい白いオクラ「ヘルシエ」「紫とうがらし」などが認定されている。
御所市農業委員会(壷井和子会長)では、遊休農地の増加が深刻な課題となるなかで、市内の農地を守り、次世代へつなげるため、遊休農地解消に向けた啓発活動の取り組みを進めている。
同市の農地が遊休化する主な要因は、農業者の高齢化と担い手不足、鳥獣被害によるもの。70歳代の経営者が多くを占める農業構造に加え、農業委員会が行った意向調査でも、「後継ぎがいない」や「後継ぎが不明」との回答が多く寄せられており、先が見通せない状況だ。
また有害獣の被害については、市域の多くを占める中山間では御所芋などの特産物が猪に食い荒らされるなど、その被害は甚大なものとなっている。
同委員会では、人・農地プランの実質化を踏まえ、(1)アンケート調査に取り組む「調査部会」(2)景観作物の栽培などを通じて遊休農地解消の啓発活動に取り組む「活動部会」(3)耕作放棄地対策として、非農地判断の推進に取り組む「政策部会」──の三つの部会を設置し、それぞれの部会ごとに課題の解消に向けた活動を展開している。
「活動部会」では、国道沿いの遊休農地に景観作物を植え、遊休農地解消に向けた啓発活動を行っている。6人の委員の話し合いにより始まった取り組みだ。委員自らがコスモスの種播きから、草刈り、耕運などを行った。遊休農地は見事に解消し、見頃を迎えたコスモス畑には、人々が足を止め写真撮影する光景も多く見られた。
啓発活動が行われた農地の周辺の自治会からは、「次回は自分たちも景観作物を植え、遊休農地を増やさない活動をしたい」との申し出があった。同市の担当者は「取り組みの波及効果が現れている」と話す。
同委員会の壷井会長は、「市町村によって多少事情は異なるが、農業委員会が受け持つ課題はどこも同じだと思う。他の事例を参にしながら、地域農業の振興に向けて活動を進めたい。多く方々に農業委員会の活動を知っていただくため、情報を発信していきたい」と思いを語る。