新たな担い手の農地確保を支援 宮崎県スタンバイ農地事業

 新たな担い手が農地を速やかに利用できるよう、農地中間管理機構が就農予定農地を中間保有し、経営開始に備える宮崎県スタンバイ農地事業スタンバイ期間中農地対策に加え生産振興基盤整備など各部門が連携して支援する。新たな担い手への農地集積・集約が期待される。

 宮崎県では、将来の地域農業を支える新規就農者、新規参入者などの新たな担い手が農地を速やかに利用できるよう、農地中間管理機構が就農予定農地を中間保有し、就農後速やかに経営開始できるようにしておく「宮崎県スタンバイ農地事業」に取り組んでいる。
 スタンバイ農地事業は、人・農地プランの設定区内の地域住民が農業委員や農地利用最適化推進委員を交えて話し合い、(1)守るべき農地(2)担い手(3)地域農業のあり方──などを明確化するとともに、新たな担い手を中心経営体に位置づけることが要件だ。取り組みにあたっては、市町村、JAなどの関係機関で構成される推進チームが定期的に会議を開き、農地、生産振興、基盤整備などの各課題について支援策を検討する。

キャベツの収穫作業

 この事業に取り組む宮崎県延岡市須美江地区は、近くに海水浴場があってリゾート地として人気がある一方、高齢化や担い手不足、鳥獣被害の拡大で農地(水田)を維持できなくなることが懸念されていた。また、多くの地区内農地を借り受けていた農業法人が撤退したことにより、担い手の確保が課題となっていた。
 市が中心となって農地の受け手を探す中、県内青果卸がキャベツの安定供給を目指して設立した法人に着目。2019年度から参入の準備を開始した。
 同事業の活用にあたっては、市と地区役員が地権者に粘り強く説明し、農地中間管理機構への農地貸し付けの同意を得た。生産振興では、普及センターが水田でのキャベツの栽培方法などの技術を実証。事務所や施設、機械などの導入には各種補助事業を活用した。
 また、農地中間管理機構を事業実施主体に、国の農地耕作条件改善事業に取り組み、2020年度から区画整理や鳥獣侵入防止柵の設置などの基盤整備を実施。農地整備・集約協力金を活用して地元負担ゼロで行うことができた。
 同事業の活用により耕作者不在の農地約6ヘクタールを維持することができた。同法人は地域内からの雇用を受け入れるなど、地域の一員として集落の維持にも貢献している。
 同事業は現在、宮崎市、串間市(新規就農)、日向市(企業参入)でも取り組みが進められている。今後、県内各地で同事業を活用した農地の集積・集約が期待される。