「農業塾」で担い手を確保・育成 山梨 笛吹市農業委員会

 笛吹市は桃・ブドウともに日本一の生産量を誇る果樹王国。果樹生産を支えているのは家族経営の農家だが、その数は年々減少。耕作放棄地が目立つようになってきた。同市農業委員会(三枝啓一会長)では、JAなど関係機関と連携し、新規就農者の確保や農業経営の改善を支援する「農業塾」を運営し、課題解決に取り組んでいる。

好評の果樹講習会には多くの参加者が集まる
((上)ブドウの剪定講習、(下)桃の剪定講習)

 2018年4月、市、農業委員会、JAふえふきが三者協定を結び「笛吹市農業塾」を設立した。市とJAの出資によりJAふえふきに事務室を置き、運営を始めた。農業塾では新規就農に向けた技術講習をはじめ、農地のあっせんや経営改善など農業に関する総合相談事業を行っている。
 相談業務はJAふえふきのOBが対応する。長年培ってきた県の農業指導機関やJAグループなど関係者との人脈を生かし、また多くの農家から得られた豊富な情報をもとに、果樹栽培技術のみならず、実践的な情報提供を行っている。相談者に対しては、実現可能な就農計画づくりの支援と現実を見据えたアドバイスを丁寧に行うことにより、新規就農者の確保を図っている。最近はシャインマスカットの生産を希望する者が増えているという。
 果樹栽培の技術講習会では、JAや県峡東農務事務所、市指導農業士会が講師を務める。テキストは県や関係機関が作成したものを利用。参加者からは講習内容が分かりやすいと好評を得ている。また、地域の実情に即した講習会にするため、市内各地の農園主の理解と協力を得て、複数の講習会場を確保している。

農業塾のチラシ

 昨年3月には事務室の一部を農業委員会や農林振興課に隣接する市役所本館1階に移転。農地や補助事業の相談に迅速に対応できるようにしている。
 多くの関係者の力添えもあり、今年2月末時点の果樹講習会の参加者は前年の2倍を超える1339人にのぼった。窓口での相談者数も200人を超え、農業塾の取り組みは市民に定着し始めている。果樹農業は高品質生産技術により、一定の面積があれば高収益が見込まれる特性がある。また、必ずしも大規模な農地集積を必要としない側面も持っている。
 同市の農業塾の取り組みは、生産技術や経営感覚の向上を支援することにより担い手を確保・育成し、今ある農地の利用の最適化を図るもの。果樹地帯での人・農地プランの一つの形態として注目されている。