農地利用の最適化へ 地域密着の活動推進 鳥取市農業委員会

鳥取市農業委員会(濱田香会長)は、2004年に1市8町村の合併により誕生した。現在、農業委員24人、農地利用最適化推進委員48人の計72人体制で、県全体の農地面積の約20%にあたる6870ヘクタールを管轄している。

現場の声を集約した農地利用の最適化に向けた、
市長への意見を提出する濱田会長
(右)

 同委員会の濱田会長は現在2期目で、2018年6月に会長に就任した。県庁所在地の農業委員会では全国初となる女性会長だ。県農業委員会女性協議会(会員37人)の会長としても活躍し、県内の女性委員の先頭に立って活動している。
 同時に会長職務代理には田渕緑さんが就任。女性2人で大組織の委員会活動を引っ張っている。同委員会には現在、農業委員3人、推進委員2人の計5人の女性委員がいる。同市では2015年の農業委員会法改正以前から議会推薦枠の4人はすべて女性を推薦するなど女性登用の認識は高い。
 女性委員は、担い手育成の観点から農業者年金加入推進に取り組んでいる。積極的な声がけや戸別訪問により成果をあげて全国表彰を受けるなど、委員会活動全体の活性化につながっている。
 同委員会では、農地利用最適化に向けて市内を6ブロックの区域に分けて活動している。
 高草地区では2021年2月に、農業委員、推進委員の呼びかけで担い手や関係者を集めた地域農業を考える意見交換会を開催。人と農地の問題を地域全体で取り組もうと旗振り役を務めた。
 アンケートや話し合いを進めたところ、後継者がいない農家が9割にも及ぶ集落があることがわかった。地区担当の推進委員からは危機感を持った取り組みが必要との報告があった。濱田会長は「ここからどうやれば農地を活かしていけるかを話し合い、地域の合意形成を図るかが重要。まずは各家庭で話し合いをしてほしい」と呼びかけた。同委員会では地域で出た「人・農地」の課題や問題点を総会で報告し情報共有。話し合いの進め方なども委員同士で研さんを進めている。

農業委員、推進委員の呼びかけで、
担い手や関係者を集めて開かれた、
高草地区の地域農業を考える意見交換会

 同委員会では毎年、こうした活動を集約し、農業委員会法第38条に基づく農地利用の最適化に向けた意見を市長に提出している。本年度は昨年11月に、(1)遊休農地発生防止の観点からの有害鳥獣対策(2)担い手への農地集積・集約のための圃場再整備(3)新規参入に対するサポート体制の充実──などを現場からの声としてその実現を行政に対して求めた。
 濱田会長は「条件不利地では有害鳥獣による被害が拡大し、深刻な状況にある。離農にもつながって遊休農地の増加の要因にもなっている。対策は待ったなし。私たちは担い手や新規参入はもとより、農業者全体の声を聞き、地域に寄り添った活動をさらに進めていきたい」と力強く語った。