長野 飯綱町農業委員会 農地利用状況調査にタブレット端末活用

 飯綱町(いいづなまち)は、長野県の北部に位置し、リンゴ、桃など果樹栽培が盛んな地域である。町農業委員会(高橋明彦会長)は、農業委員16人(うち女性2人)、農地利用最適化推進委員8人の計24人で構成している。

 地域における将来の農地利用の方針を定めた「人・農地プラン」は、町内6地区で策定されており、昨年3月までに実質化が終了している。2021年度の担い手への農地の集積目標は4割としているが、現状は16.4%となっている。同町の農地は、中山間で傾斜地が多く、また果樹地帯のため集積・集約化が難しい地域であり、近年、農業従事者の高齢化と担い手の減少により、耕作放棄地が増加し、その解消が大きな課題となっている。
 こうした中で、同委員会では、町の予算で18年からタブレット端末を全委員に導入し、利用状況調査などに活用して最適化活動を進めている。それまで委員による農地の巡回調査は、地図や農地台帳を持ちながら目視で利用状況を確認。調査結果を農地台帳に記帳してきたが、紙ベースの作業は手間と時間がかかっていた。
 タブレットの活用により、自分の位置と近隣の航空写真データ、筆界、履歴が画面に表示され、それをもとに、ピンポイントで遊休化の恐れがある農地に出向き現在の利用状況を確認することができる。また、簡単な操作によりその場で最新のデータを入力できるため作業時間が短縮され、業務の効率化が図られている。

農地利用調査結果から、最終的に所有者の意向を確認し、委員会全体で非農地判断を協議
タブレット端末の画面

 同委員会は、毎年7月から8月にかけて利用状況調査を実施している。具体的には、まず地区担当の委員がそれぞれ調査を実施。その結果、山林化が進行するなど再生困難な農地については、9月にもう一度、3人の委員が班を編成して現地確認する。最終的には、補助事業の受益地でないかを含め所有者に意向を確認し、委員会全体で非農地判断を行っている。21年度は、82筆、約7.6㌶を非農地に認定した。遊休農地の所有者への利用意向調査では、中間管理機構の活用を希望する者が回答の約半数を占めているが、受け手の確保が課題となっている。
 小野剛史農地利用最適化推進委員は「担当の区域を巡回した印象では、造成されたアクセスのよい場所でも保全管理されていない農地が時折見受けられる。農地は一度放置されてしまうと、年々回復に時間と費用がかかる。早期に発見し対応していくために農地パトロールは欠かせない。それを効率的に行う上で、タブレットは非常に有効である」と話している。
 農業委員会事務局の若林諒さんは「新たに国で検討されている目標地図にも対応できるよう、今後は、国のシステムとの連携調整を図っていくことが必要である」と展望を見据える。