農業委員会ネットワーク通信 農業者年金加入推進に力 福岡市農業委員会

 福岡市は人口160万人を超え天神(てんじん)・博多(はかた)地区を抱える九州最大の都市だが、農地面積も約2370㌶を有し、水稲、大根、キャベツ、トマトなどの生産が盛んだ。しかし、多くが兼業・小規模農家で、専業農家は少なく、農業者年金制度の加入推進が課題となっている。昨年、同市農業委員会(中村光明会長、農業委員19人、農地利用最適化推進委員25人)は、JAと協力して農業者年金の加入推進に取り組み、2人の新規加入につなげた。

 福岡市の農業者年金加入推進部長を務める城戸武稔(きどたけとし)さん(69)は、2020年6月に初めて同市の農業委員となり、同市農業委員会の副会長および農業者年金の加入推進部長になった。
 城戸副会長は加入推進部長になったものの当初は農業者年金には旧制度のイメージがあり、いい印象はなかったという。しかし、農業委員となって参加した研修会で農業者年金の説明を聞き「まったく違う制度」と、その印象はガラリと変わったという。同年の改選では約半数が新任委員となったため、まずは、委員が制度を知るために、独自に20年10月、21年11月と研修会を開催し、農業者年金への理解を深めた。
 城戸副会長は、現在の農業者年金の制度は農業者にとってメリットが多く、終身でもらえるのは魅力と、加入推進部長となった1年目にまずは自身の息子を加入させた。
 また、自身が元JA職員で営農指導や理事を務めていた経験から、推進にあたっては、地元のJA福岡市板付(いたづけ)支店に声をかけた。支店長も農家にとってプラスになる制度だということを認識し協力。一緒に対象者を訪問し、チラシ・パンフレットなどを活用し説明を行った。とりわけ前の制度のイメージを取り払い、新しい制度を理解してもらうために、説明の際には対象者の親にも同席してもらうよう取り組んだ。
 同地域では、加入を進めるうえで税制面での優遇措置が一番のポイントになったという。加入に興味を持った対象者には、後日、同支店にて農業委員会事務局職員も加わり、再度制度について説明を実施。これらの取り組みにより21年度は新たに2人の加入実績につながった。

農業者年金加入推進部長を務める城戸副会長(中央)と事務局の古島係長(右)と若松さん

 「今の農業者年金の制度は実際に聞いたら入りたいと思うような制度。しかしながら農業委員会だけで推進することにも限界がある。JAが農家に一番近い存在で、年金の推進には両者が協力していくことが必要だ」という城戸副会長。「自分は上乗せの年金には加入していなかったが、妻は加入していた。自分の自由になるお金があることはいい」と自身の経験から国民年金への上乗せと夫婦での加入の重要性も話す。
 また同市では、毎年15経営体ほど新規就農者もおり、「掘り起こせば加入できる人はいる。コロナ禍で農業者が集まる機会は減り、直接説明する場が減ったが、今すぐ加入できないとしても、制度を知らないのはもったいない。まずは制度周知を図っていきたい。地区や対象者によって進めるポイントをかえる必要もある」と思いを語る。今後は他の地区での推進にも力を入れていく。