静岡 富士宮市農業委員会 関係者一体で総合的に支援 18~20年度3年間で71人就農

 富士宮市(ふじのみやし)は静岡県東部、富士山の南西麓に位置し、農業産出額のうち酪農、養鶏などの畜産が約8割を占めるほか、茶、水稲、野菜の生産が盛んだ。富士山という抜群の景観も手伝い就農の相談は多い。同市農業委員会の新規参入促進の取り組みを紹介する。

 富士宮市は、農業委員会(齊藤学(さいとうまなぶ)会長)、農業政策課、県富士農林事務所、JA富士宮(現JAふじ伊豆(いず))、富士開拓農協、認定農業者、県農業経営士が連携し、技術指導から生活支援まで新規就農者を総合的にサポートできる体制を整えている。その中で同委員会は経営の基盤となる農地の確保について支援し、2018年度は24人、19年度は30人、20年度には17人と着実に成果をあげている。
 同委員会の働きかけもあって市内で就農した農地所有適格法人、アドリ㈱(小河麦人(おがわむぎと)代表、35)は青ネギの専作経営を行い、17年に法人を設立。現在は市内約20カ所、計10㌶の作付面積を有するまでに成長した。年間約200㌧を加工用などに出荷しており、昨年から一般向けの販売も始めた。高級ネギのブランド「富士の雅(みやび)ネギ」を立ち上げるなど、地域の中心的な担い手として人・農地プランにも位置づけられている。
 「学生時代から農業に興味を持ち、農業資材会社を経て新規就農したが、就農にあたって一番大変だったのが〝農地の確保〟」と小河代表。今では大規模法人の代表となった同氏だが、就農当初に借りることができたのは50㌃の耕作放棄地だった。ただし、この農地を借り入れるまでが一苦労。まず農地を確保するため県富士農林事務所などに相談。相談を受けた同農林事務所は同委員会に連絡。地元の農業委員を通じて、ようやく借りることができた。耕作放棄地ではあったが、同氏の熱心な作業ぶりが認められ、同委員会の支援により、農地中間管理事業を通じて農地を借り受けて規模拡大を実現した。
 一般的な農家の心情としては、農地を適切に管理してもらえるのか不安であるのも事実。地域の農業委員が同氏の作業ぶりを見守り、所有者をはじめ近隣農家にも信頼を得た成果だ。

新規就農して青ネギの専作経営を行っているアドリの小河代表

 昨年4月、同市ではさらなる新規就農の促進を図るため、小規模の農地でも耕作できるよう農地法第3条における下限面積を緩和。1㌃以上(1㌃未満の場合はその農地の面積)から貸借可能とする制度をスタートさせた。今年の3月に第1号となる申請が許可され、5月時点で3件の許可、3人がこの制度により農業参入を果たした。農家の高齢化などによる遊休農地の増加を未然に防ぐことも狙いの一つだ。
 同委員会の担当者は「有機農業を希望する新規就農者が多い傾向にあり、農地の管理について近隣農家とのトラブルもあるため、農業委員・農地利用最適化推進委員による日ごろの農地の見守りと適切な指導、アドバイスが大事になる」と今後の課題を話す。