農地最適化進め地域農業の維持・発展へ/滋賀 東近江市農業委員会

東近江(ひがしおうみ)市は近畿圏最大となる8,390㌶の農地面積を有し、農業生産額も県内最高となる約114億円を誇る(2020年農林業センサス)。豊富な水源と肥沃な農地とともに基盤整備率も9割を超え、担い手にとっては農地の集積・集約化が農業経営の課題だ。同市農業委員会(植田儀一郎(うえたぎいちろう)会長)が、琵琶湖(びわこ)に面する水田地帯、栗見新田(くりみしんでん)町で取り組む農地利用最適化活動を紹介する。

ステップ1 地域の担い手を対象に農地集約の意向を調査

「まずは地域の担い手の実態を把握するよう努めた」--と語るのは農業委員の湯ノ口絢也(ゆのぐちじゅんや)さん。同地域も将来的に「後継者不足」が深刻化することが予想され、現在の担い手の経営改善を進めないと後に続く者がいないと感じた。
 このため地域の担い手を対象に「農地集約に関するアンケート」を実施。その結果、「農地を集約したい」という声が多数を占めたが、集約化を進めていくためには、担い手同士の話し合いによる課題の共有や農地所有者の理解を基本とした賃借料の統一などの課題が挙がった。

担い手会議で説明する湯ノ口委員(奥左側と右)

ステップ2 課題解決へ関係者集結 まず賃借料の統一達成

これらの課題解決のため、自治会や土地改良区、農事改良組合、担い手を構成員とした農地利用調整組織「くりみ結いの会」を設立した。
 同会では、地域農業の現状や、農地集約の必要性と農地所有者の理解、担い手同士による利用権交換の仕組みなどの理解を深めるため、チラシを作成し全戸に配布。また、地域住民も含めた説明会を開催し、丁寧に説明を行った。こうした地域の関係者が一体となった取り組みの結果、担い手ごとに差があった賃借料の統一を達成した。

ステップ3 担い手の意向受け圃場マップを作成

その後担い手会議を開催し、利用権交換の手続きを説明して理解を深め、実施の意向を把握。担い手ごとの意向を尊重して今後の地域農業に反映するよう努めた。
 同会議ではブロックローテーションや畦畔管理、圃場条件の違いや入作(いりさく)農家との調整など課題も多かったが、意見が偏らないよう、参加者全員が発言できる機会を設けるよう努めた。また、先進事例の紹介や、参加者が目で見てイメージできるように、Z-GIS(ゼットジーアイエス・JA全農が開発した営農管理システム)を活用して圃場マップを作成。担い手が納得できる会議を心がけた。
 取り組みの結果、集約化はもとより「機械や資材の貸し借りだけでなく、気軽に話し合える環境が醸成され、集落の農業を維持し発展させられる環境が整備された」と湯ノ口委員は話す。
 「今後は『くりみ結いの会』を農地所有者と担い手の農業に関する総合窓口とし、集落外の担い手との話し合いやブロックローテーションの見直し、隣接する集落との話し合いも実施し、集落間での利用権の交換も進めていきたい」と意気込みを語ってくれた。