担い手につなぐ「地域リレー方式」で成果 佐賀 伊万里市農業委員会

 佐賀県伊万里(いまり)市は、伊万里湾を臨む県西部、長崎県との県境に位置する。同市の東山代町(ひがしやましろちょう)は1963年まで実施した干拓事業から半世紀が過ぎ、老朽化などのため新たに大規模な水田の農地整備事業に踏み切った。同市農業委員会(山口友三郎(やまぐちともさぶろう)会長)は同事業を契機に農地を担い手に引き継ぐ「地域リレー方式」により成果を上げ、他地区へも波及効果を生んでいる。

 「次世代にきちんと整備した農地を残したい、という農家の思いが強かった」――そう語るのは地元の農業委員で東山代干拓土地改良区の理事長も務める西山哲(にしやまさとし)さん。東山代干拓事業から半世紀を過ぎ、これまでパイプラインの老朽化による漏水や用排水路の法面(のりめん)崩壊によって補修を繰り返してきた。また、地下水位が高く、湿田状態になりやすいため裏作の麦の作付けが進まなかった。さらに圃場の区画が狭小で大型機械の導入や、担い手への農地の集積・集約が困難を極めていた。
 「担い手が意欲を持って経営に取り組めるようにしなければ農地を次世代に引き継いでいけない」と危機感をつのらせた西山さんら農業委員や農地利用最適化推進委員は、営農座談会など地域での話し合いを進め、国の経営体育成基盤整備事業を導入する運びとなった。同事業は昨年12月に着工し、約160区画で平均31㌃の圃場を2025年までに48区画、1区画約1㌶から1.7㌶の大区画化を図り、暗渠(あんきょ)排水の整備なども行う。また西山さんの推奨により、乾田直播き(かんでんじかまき)による米栽培の省力化にも着手。さらに、米の収穫後に玉ねぎや麦などの裏作で収益アップを目指すこととした。
 同市農業委員会は「未来にバトンをつなごう!」と銘打ったパンフレットを作成し、地域の話し合いを重ねた。とりわけ農地中間管理事業の活用については、粘り強く周知活動を展開した。こうした取り組みの結果、所有者68人(耕作者33人)の農地約50㌶を22人の担い手に集積・集約することができた。

整備され大規模化した農地
農地バンク利用前(左)と利用後(右)。集積・集約され、省力化する

 同地域は、整備後の農地をさらに効率よく利用するため、東山代干拓農地を守る会(西岡和弘(にしおかかずひろ)会長)を設立。今後は、「地区農地流動化計画」に基づき、さらなる農地の集約化を進める予定だ。また整備後の圃場では、乾田直播きと二毛作を確立するとともに、新たな大型機械や高収益作物を導入し、労働力の省力化と、効率的な営農に取り組むこととしている。
 中山間地域の真手野(まての)地区の茶園や立川(たつがわ)地区と府招上(ふまねきかみ)地区の果樹園で廃園される前に次の耕作者に引き継ぐ園地流動化の実践が、今回の東山代干拓の取り組みにつながった。さらに現在、他地区でも地域リレー方式の集積・集約化が進行している。