長崎 雲仙市農業委員会 地域農業継続へ全農家の意向調査

 雲仙(うんぜん)市は2005年10月に7町合併により誕生。島原半島の北西部にある雲仙普賢(ふげん)岳を取り巻くように位置する。橘(たちばな)湾や有明海を望む美しい海岸線など雄大な自然環境を有する。露地・施設野菜、水稲、畜産、花きなど多種多様な農業が展開され、耕種は県内1位、畜産は同2位の算出額を誇る有数の農業地帯である。

 同市農業委員会(馬場保(ばばたもつ)会長)は、将来にわたる地域農業の持続を目指して農地利用最適化活動に取り組んでいる。
 2018~20年は市内の農地を耕作する農家の意向把握に努めた。対象は農地台帳に登載されている者で農業経営または10㌃以上の農地を所有する世帯。市内在住5839戸、市外在住703戸の合計6542戸だ。
 市内在住者には農業委員、農地利用最適化推進委員が戸別に訪問。調査票の配布・聞き取り、回収まで実施した。同委員会は農業委員19人、推進委員29人の48人体制だが、市内の対象世帯すべての調査が完了するまで3年を予定していたが、各委員の熱心な推進により調査期間は半減、回収率は約9割に達した。
 21年1月に調査結果を公表。農業経営の今後について、10年以内に農業経営を「規模縮小」「継続困難」「廃業予定」と考えている経営主は24%、さらに後継者については「めどがない」が49%の結果であった。同委員会は強い危機感から具体的な対策に着手した。
 まずは、将来的に継続が困難とする農地対策が喫緊の課題。マッチングの強化とともに後継者不在農業者に対し、第三者継承の可能性の有無などを確認している段階だ。第三者継承を実現するためには、継承の前後を通じた支援体制が求められる。これらの課題については関係機関と連携し、一歩踏み込んだ支援が行えるよう検討しているところだ。

人・農地プランの集落座談会
地図をもとに協議する委員

 今後、高齢化などで、離農を余儀なくされる農業者の増加が見込まれる。規模拡大志向の農業者をはじめ、定年帰農者、半農半Xなど、新たな担い手につなげる取り組みを進めている。21年4月からは市の空き家バンク制度とセットで推進。市外からの移住者の増加も視野に入れるなど期待をかける。活用可能な農地は一筆たりとも見逃さないという姿勢である。
 情報は、市のホームページや窓口で公開。現在までに21件、1万6434平方㍍の農地の現況写真と地図が掲載されている。
 今後も本制度の周知をはじめ規模縮小や後継者不在と回答した農業者には、さらに働きかけを行うなど、かけがえのない農地を確保し、活かす取り組みに向け、日々、奔走することとしている。