重点地区設定し集約化へ 多い出入作、分散錯圃など支障  岩手・矢巾町農業委員会

 矢巾町(やはばちょう)は、県都である盛岡市の南に隣接する田園都市。農地の大半が平場に立地し、農業は水稲・麦・ソバなど水田農業が主体で、野菜や果樹も盛んだ。農地集積率は80%を超えるが分散錯圃(さくほ)が多く、同町農業委員会は、通常の最適化活動に加え、重点地区を設定し農地の集約化に取り組んでいる。

中川会長(左)と高原委員

 同町農業委員会(中川和則(なかがわかずのり)会長・農業委員15人)は、農地の担い手への集積率が8割を超え、遊休農地率も1%を下回ることから農地利用最適化推進委員を設置せず、農業委員が最適化活動を実施している。
 同町は、農地の多くが平場の基盤整備された水田で、盛岡市に近いことなどから兼業率が高く、労働力を集約するため営農組合が各地に組織された。集落営農法人や営農組合の構成員(担い手)に集積が進んだが、公共事業による代替地取得などにより、町内外の出入作が多く、農地の集約化が課題となっていた。
 中川会長は「転作の麦や大豆の集団化、ブロックローテーションに支障があり、担い手から解消を切望されていた」と、集約化の重点地区活動のきっかけを語る。
 こうした背景のもと、県が中心となり(公社)岩手県農業公社(農地中間管理機構)、岩手県農業会議など県域5機関・団体により農地の集積・集約化を進める県モデル地区を設置することになった。これに呼応して同町三矢巾(さんやはば)地区が2020年度にモデル地区に手を上げた。
 具体的な取り組みは、①筆ごとの利用状況の整理と現況地図化②対象農地ごとの意向調査③担い手を交えた話し合い④農地交換――の手順で農地の集約化を実施した。以来、同地区をモデルに他の地区でも集約化に向けた取り組みが進められている。

図 一昨年度の三矢巾地区の集約例。○印の農地を集落営農法人に集約
昨年度の関係者による議論(和味、舘前、岩清水地区)

 農業委員会が事務局を担当する人・農地プランの実践を推進する「矢巾町農業経営体連絡協議会」(会長=農業委員会会長)が、実施した農家のアンケート調査をもとに、重点地区を選定。町が準備した現況地図をもとに話し合いを進めている。農地所有者の同意や条件の悪い農地を預けられてしまうとの懸念、代替地の確保などが課題となっている。それぞれの課題に対する話し合いでは、農家への丁寧な説明を心がけている。
 本年度、重点地区活動に取り組む白沢(しらさわ)第1地区の担当委員である高原弘明(たかはらひろあき)さんは「担い手の高齢化などの中で、営農組合をどう維持していくかが課題」と語る。高原さんは地区の集落営農法人、(農)みしまで副組合長を務め、地域農業の将来を見据えて取り組んでいる。「農地の集約化を進め、農作業の効率を高めることは、とても重要だ」と意気込む。
 中川会長は「矢巾町は集積率が高いが、全町で分散錯圃が課題。今後も集約化を進め、町農業の維持発展に貢献したい」と意欲を語る。