農地の維持継承へ地区別農事相談会 島内10カ所、担当委員が対応  新潟・佐渡市農業委員会

 2011年6月、「トキと共生する佐渡(さど)の里山」として、佐渡島(さどしま)全体が日本で初めて世界農業遺産(GIAHS)に認定された。「朱鷺(トキ)と暮らす郷(さと)づくり」認証制度を制定し、農薬や化学肥料を減らし、生きものを育む農法などを推進してきたことが認定理由となった。それから10年余りがたち、地域を挙げて佐渡の農業を次世代に継承しようと取り組みを進める。

 佐渡市は島全域が04年に10市町村が合併した広域市。農業生産は、稲作、果樹、いも類を中心に野菜や畜産も盛んな地域。一方で農家の高齢化などにより、農業の維持・継続のための取り組みが進められている。
 農地の維持継承をめざす同市農業委員会(山本利雄(やまもととしお)会長)は、本年度から新たに地区別の「農事相談会」を開催し、農家からの農地に関する相談を受けている。「農業委員会活動の見える化を進めたい」との山本会長の発案によるものだ。7月と8月、12月の5日、10日(休日の場合は翌日)の計6日間、10時から11時30分まで島内10地区(旧市町村単位)の公民館などで開催した。各会場に地区担当の農業委員・推進委員2~3人が相談対応する。開催周知は農家へのチラシ配布や、ケーブルテレビ、市のホームページを利用した。
 相談は事前申し込みとしたが、当日の飛び込み相談にも対応した。主な相談内容は「農地の貸し出し」についての相談が中心だ。中には「新規就農」に関しての相談も受けた。
 7、8月の相談者は計19人。まだ始まったばかりの取り組みのため「空振り」に終わった会場もあったが、12月を担当する委員から「事前申し込みがなくても飛び込みの相談者に対応するために予定通り開催したい」との声が出て12月も計画通り開催した。
 「地元の農業実態を把握するいい機会だった」と手応えを感じた山本会長は「来年度は目標地図の素案づくりのため、より地域に入らなくてはいけない。相乗効果を期待し、農事相談会も継続したい」と意欲を語る。

12月5日に開催された農事相談会
農地を前に思いを語る山本会長

 こうした農業委員会の見える化の取り組みを踏まえて、委員の活動記録の徹底も図っている。「農地の見守り活動」「農家への声掛け活動」のほか、新規就農希望者からの相談や遊休農地関係の相談など多岐にわたる。特に遊休農地の解消では委員自らが草刈りなどの作業を行った記録もあり、農業委員会活動の苦労が見られる。
 中には細かく相談内容や対応策が記録されているものもあり、今後の活動のデータベースとなる内容も多く、活動全体の底上げを行うために今後も徹底していくことにしている。