相続未登記の遊休農地 不在地主訪ね権利設定 兵庫・丹波市農業委員会

 丹波(たんば)市農業委員会(岸本好量(きしもとよしかず)会長)は、農地利用最適化活動として、遊休農地の解消に力を入れている。同市山南町(さんなんちょう)の北太田(きたおおだ)自治会内の相続未登記で遊休農地となっていた5筆について、県外在住の相続権者を訪問するなどして粘り強く権利設定を働きかけ、4年かけてひょうご農林機構(農地バンク)への貸し付けにこぎつけた。

「北太田自治会の遊休農地がすべて解消になった」と喜ぶ(左から)野垣さん、中西さん、竹内さん

 同自治会では、2019年から地域の農地すべてを農地バンクに集める「いきいき農地バンク方式」に取り組んでいたが、当該農地だけが所有者と連絡がとれず取り残されていた。
 農業委員会が所有者を探索すると、登記名義人が死亡した後、相続未登記となっていた。地元の相続権者が管理していたが、その人も19年に死亡、遊休農地になっていた。
 20年には、県外在住の他の相続権者に利用意向調査を実施。「いずれ息子が耕作する」と回答があり、それ以降、何度も電話や手紙を送るなど対応に苦慮していた。
 当該農地は、圃場整備済み農地の真ん中に位置し(写真2の赤枠内)、南北を分断していたので、できるだけ早く改善する必要があった。昨年3月、話を前に進めるため、農業委員の野垣克已(のがきかつみ)さん、地元農会長の竹内真泰(たけうちまさやす)さん、事務局職員の3人が当該相続権者宅を訪問し、農地バンクに貸し出すように依頼した。
 すぐに良い返事はなかったが、貸しても必ず返ってくることなどを丁寧に説明し、熟考するように伝えた結果、1カ月後に農地バンクに借り受けてほしいと連絡があった。
 今後は、遊休農地解消緊急対策事業を活用して、原状回復の上、担い手に貸し付ける予定だ。
 同行した事務局職員は、「不在地主だが所有者が確知できる農地はたくさんある。今回は隣県だったので対応できたが、これが遠方なら対応は難しい」と課題を挙げる。

 当該農地を借り受けるのは、現在、2.3㌶で主に水稲を栽培している中西哲也(なかにしてつや)さん(43)。「今は兼業だが、どこかのタイミングで専業農家になりたい。将来は20㌶まで規模拡大をめざしているので、農地の情報や遊休農地解消の事業などを紹介してもらえてありがたかった」と話す。
 農業委員の野垣さんは、「次の担い手が頑張ろうとしているので、全面的に協力したい。農業委員会でいろいろな情報を得られるから、地域の担い手にも伝えることができる」と話す。
 農会長の竹内さんは、「農業委員会と連携して解決につながって良かった。早くここがきれいになったところを写真に撮りたい」と話している。