多面的機能広域活動組織設立を後押し 岡山・美作市農業委員会

 美作(みまさか)市農業委員会(山本正人会長、72、農業委員15人、農地利用最適化推進委員26人)は2021年、同市が取り組む多面的機能支払交付金事業の市域全体を対象にする広域組織「美作市多面的機能広域活動組織」の設立に協力。集落単位で行われる説明会や周辺集落への声掛けなどに参加し、事業を後押しした。同組織設立の推進部会でも会長をはじめ多くの委員が加わり、計画の段階から事業提案など意見を交換してきた。同組織は現在、集落における共同作業や農業施設の保全管理活動の取りまとめ組織として活躍している。

広域組織の設立総会。農業委員会の委員も参加した

 美作市は、中国山脈に接した中山間地域で、多くの集落で中山間地域等直接支払交付金事業が取り組まれていた。地区・集落が行う農道、水路、ため池などの農業施設の保全管理を対象とした多面的機能支払交付金は、少数の平坦地の集落では取り入れられていた。事業に取り組もうと関心を持った集落もあったが、事務作業の煩雑さのため事業認定には至らず、広がりは見せなかった。
 しかし、高齢化や兼業化した農業経営が中心の集落では農地の保全、農業施設の管理など集落活動の停滞、縮小が目立ってきた。慣習として行ってきた共同作業が、住民に負担となったためだ。将来を見据えた市では21年、広域組織の設立を決定。広域組織が事務作業を担うことで、集落における持続可能な共同作業を後押しし、必要な支援をすることとした。

推進委員も同席した集落説明会

 市は、多くの集落で活動が取り組まれるよう各集落への説明会、組織への参加の声掛けが必要と考え、日ごろから農地パトロールで農地状況を把握している農業委員会に協力を求めた。
 農業委員会では、農地利用最適化の推進として、農地や農業施設の管理など農村社会の維持・発展につながることから積極的に協力。推進委員を中心に集落単位で行われる説明会へ出向き、周辺集落に事業への参加を呼び掛けるなど事業推進にあたった。
 広域組織化に向けた市の推進部会でも会長をはじめ、副会長、地域代表として推進委員が役員として加わり、計画の段階から事業提案など意見交換を行った。既に自身の集落で事業に取り組んでいた委員もおり、事業の長所を広く発信した。
 22年に広域組織化して2年目を迎えた現在、市内の約6割を超える集落が同組織に参加する。農地も同規模の面積が事業対象として扱われており、荒廃防止にも効果が現れている。同市農業委員会では、今後も市に協力して、農地利用の最適化を進めていく方針だ。

多面的機能支払交付金を活用した水路の掃除作業