農地管理業務を効率化 人員・資金を「守るべき農地」に重点配分 業務改革を推進 群馬・東吾妻町農業委員会

 農業委員会に求められる業務は増加の一途をたどっている。県北西部の山あいに位置する東吾妻町農業委員会(中井毅彦会長、67)は、2020年から農地管理業務を効率化し、限られた人員や資金を「守るべき農地」に重点配分するため、県や民間事業者と協力し業務改革に取り組んできた。

住家明正職務代理(左)、中井会長(中央)、寺嶋事務局長

 東吾妻町は、遊休農地や担い手不足といった中山間地特有の課題を抱えていたが、増加する法令業務などにより、地域の将来を考える余裕のない日々が常態化していた。
 農業委員会と町農林課は、業務改革を決意。①農地情報の一元管理と適正把握②農地性を喪失した農地(再生困難な農地)の管理コスト―を改善点と分析し解消に向けて取り組んできた。
 これまでは、土地改良などの農地情報を関係部署が個別管理しており、特定の農地の情報の集約に時間がかかっていた。
 また、農地台帳は固定資産税課税台帳や住民基本台帳の情報を照合できず、相続や分筆などの膨大な情報を手入力していたため、農地情報管理が十分とは言えなかった。
 これらのことから町は農地台帳の全面更新を決断。農地情報の一元化と相続・分筆情報などが自動的に更新できる仕様にした。新しい台帳は国が整備を進めるeMAFF(イーマフ)地図のデータ更新にも対応し、今後は全庁的な統合型GISへのひも付けや、独自のタブレット端末の連動などのDX化も進めていく計画だ。

最新地図を用いた現地確認をする中井会長(右)

 優良農地を仕分けるための詳細な実態把握も進めた。農地利用状況調査では、進入困難な山間の農地も数多くあったため、航空写真で農地・再生困難な農地を判別する技術を持つ民間事業者に調査を委託。再生困難な農地の詳細な洗い出しと、守るべき農地の画一的判別を行った。これにより可視化されたデータは、22年度農業振興地域整備計画変更での基礎資料としても活用され、農用地区域(将来にわたり農業振興を図る区域)の全域的な見直しに大きく貢献した。
 再生困難な農地の管理コストを低減するため、農業委員会は過去に大規模な非農地判断を実施したが、さらに『農地の所有者からの依頼に基づく非農地判断事務処理要領』を整備することで、取り組みを促進した。県知事の許可を要する農地転用と異なり、非農地判断は農業委員会で完結できるため事務負担が少なく、町の農振除外事務の負担軽減にもつながった。
 3年に及ぶ業務改革の結果、捻出された時間とマンパワーを本来の農業振興に振り向けることができるようになり、現在は新規就農者受入協議会の設立に向けた準備を進めている。
 農業委員会の寺嶋德郎(のりお)事務局長は、「町の力だけでなく、県地域機関の適切な助言と民間業者の技術があったからこそ成し遂げられた。今後は地域計画策定などで有効利用するとともに新規就農者受け入れにも力を入れていきたい」と話す。