目標地図作成へ素案作り着々 「守るべき農地」明確化 愛知・豊田市農業委員会〈旭地区敷島自治区〉

 豊田市農業委員会(杉浦俊雄会長)では、地域計画を効果的に進めるため、地区ごとに協議の場を開いている。同市旭地区敷島自治区では、農地利用最適化推進委員が中心となり、実現性の高い将来設計を進める。市では敷島自治区の取り組みをモデルに、目標地図の素案作りに取り組んでいる。

 豊田市旭地区(人口2365人)は、矢作川上流の中山間地域で、人口減少、高齢者の増加、農地荒廃といった過疎化が進む。農業委員会では目標地図の素案作成に当たり、農地の集積・集約化や「守るべき農地」の区域設定を各集落で進めている。
 農地集積・集約化は、これまでも農業委員会を中心に、多くの集落で進められていた。しかし、現状の担い手数ではこれ以上は難しく、次の一手を考える時期に来ていた。
 そんな折、地域計画策定の話が出たため、同地区の敷島自治区(人口889人)では、昨年末から鈴木順三推進委員を中心に目標地図素案作成の話し合いを始めた。自治区内の集落ごとに守るべき農地のゾーニングを行い、一定規模の担い手、自作農家に色分け作業を進めた。これまで4回の会合を重ね、素案がほぼできあがっているという。
 話し合いが円滑に進んだのは、農地中間管理機構を通じて集落の全農地を借り受ける一般社団法人押井営農組合(鈴木辰吉代表理事)の存在も大きい。段階的な農地の利用集積を進めるため、耕作希望者には特定農作業受託で貸し付けも行われており、日頃から農地について話し合っていたことが背景にある。
 話し合いを主導する鈴木推進委員は「高齢化が進む地域で、先の長い計画を作ることの違和感が見られ、制度への理解を深める丁寧な説明と、当事者(農家)として計画づくりへの積極的な取り組み、作成意識の向上をめざして会議を重ねた。計画づくりを通して、集落への再認識と情報共有を進め、世代を超え実りある計画の進展を期待している」と話す。また、押井営農組合の鈴木代表理事も「農の営みを諦めたとき集落は消滅に向かう。地域を暮らしの場として次世代につなぐ最後のチャンス」と話す。
 この経験を基に、他の自治区でも、推進委員が各集落の意向を聞きながら、担い手が足りない中、どのように農地を守っていくかを考え、素案作成を精力的に進めている。

鈴木推進委員が色分けした地図を基に素案作成地域を検討
地域の将来について話す鈴木代表理事

敷島自治区は、農村型地域運営組織(農村RMO)にも取り組む。農用地保全活動や農業を核とした経済活動と併せて、生活支援などの地域コミュニティーを維持できるよう取り組みを進める。
 今年4月には自治区が主導し「しきしまの家」をオープン。地域住民が普段の悩みを相談したり、カフェとして住民の憩いや交流の場として利用したりしており、地域の維持と活性化に向けて、さまざまなことに取り組んでいる。