担い手への農地集積に着実な成果 長崎・大村市農業委員会

 県の中央に位置する大村市は、高齢化や担い手不足という課題を抱えながらも施設園芸や畜産、果樹、花き、水稲など多様な農業を展開する。大村市農業委員会(農業委員19人、農地利用最適化推進委員19人)は毎月、総会終了後に「最適化活動会議」を開き、農地集積状況や新規就農者の情報など各委員が共有し、委員会活動の活性化につなげている。

 同市農業委員会は今年7月、改選を機に県内初の女性会長が誕生した。就任した川本康代会長は「担い手作りが急務。就農や農地に関しては農業委員や推進委員に気軽に相談してほしい」と意気込みを話す。
 同市農業委員会は特に農地集積に力を入れる。同市寿古(すこ)地区で農地中間管理事業を推進した際には、同地区にある三つの水利組合で地域集積協力金とそれを活用した水路やポンプの更新を提案。欠席者には戸別訪問で根気強く説明し、地区の農地44㌶のうち88%を担い手に集積した。
 川本会長は「相手ごとに説明の切り口を考え、いかに分かりやすく制度を伝えるかを心がけた。農地中間管理制度の目的を理解してもらい、農地所有者など約100戸の合意を得るまで2年間かかった。ヤミ小作の解消にもつながりよろこんでもらえた。他の地区でも取り組んでもらえるよう委員会としてできることは全てやる」と話す。
 同市では、42集落で人・農地プランを実質化している。地域計画の策定では、意向調査票の作成と集計、目標地図の素案作りを農業委員会が行い、調査の実施や集落での話し合いは、関係機関が連携して取り組んだ。
 重点の寿古地区では、5月に水利組合総会で地域計画について説明し意向調査を実施。欠席者には調査票を手渡した。調査票には所有農地一覧を添付し、1筆ごとの意向も把握する。6月には中山間直払に取り組む集落への説明会で意向調査の協力を依頼、7月には各集落の総会などで意向調査を実施している。
 現在、農業委員会サポートシステムで目標地図の素案を作成中だ。

現地調査に備え、7月までに本年度40台導入したタブレットの研修会も実施

 同市は新規就農者支援対策にも力を入れる。市がグリーン・ツーリズム推進協議会と実施する「農業インターンシップ事業」では、毎年、県内外から農業体験に10人が参加。受け入れ農家には農業委員も複数登録されている。就農希望者には県の研修制度を紹介し、国の事業である新規就農者育成総合対策(旧農業次世代人材投資資金)を受給できない場合は、日額6千円の給付金や家賃の一部を助成。就農した場合は、同市主要品目の導入経費や農地・納屋付き住宅の賃借料の補助など支援も充実している。
 農業委員や推進委員は就農希望者に事業を紹介するとともに、空き家情報を担当課に提供するなど対策の一翼を担う。この結果、15~39歳までの若い基幹的農業従事者は2015年から20年にかけて11%増えた。