遊休農地再生し人気スポットに 大分・佐伯市農業委員会

 九州で一番広い面積を有する佐伯市は、山・里・海がそろう農林水産業が盛んな地域。温暖な気候を利用し、米づくりやイチゴ、ミカンなどの野菜・果樹、キクなどの花き、茶などを生産する。しかし、海岸沿いや山間部などでは遊休農地も多く発生しており、それらを解消しようと農業委員会を中心に継続的な取り組みが行われている。

解消前の農地
解消後の農地。家族連れなど観光客の人気スポットに

 佐伯市農業委員会(宮脇保芳(みやわきやすよし)会長)は、2017年から毎年、遊休農地に景観作物を植え、観光客を呼び込む活動をしている。一年を通じて楽しめるよう春は菜の花、夏はヒマワリ、秋はコスモスが彩る。
 この活動は、「遊休農地解消事業」として佐伯地区食料・農業・振興協議会の支援を受けて実施。種代や肥料代などは、同事業費を活用している。
 植栽する遊休農地は、同市蒲江(かまえ)インターチェンジからほど近い森崎浦(もりさきうら)地区にある。同地区を含む蒲江周辺は海産物がおいしいと評判の観光地で、景観作物がお出迎えをする格好だ。
 農業委員・農地利用最適化推進委員が作り上げる花畑は、草刈りから耕起、肥料散布などを丁寧にすることで農地を埋め尽くすほどに咲き誇る。
 満開に合わせ、マスコミへの案内や市のホームページ、SNSでの発信を積極的に行っており、ヒマワリが見頃を迎えた7月末には1週間で2千人を超す人が訪れる。写真を撮ったり花の中の遊歩道を散策したりと人気スポットで、訪れた人は「海の青さとヒマワリのコントラストが最高」と声を弾ませる。
 また、パネルを設置し遊休農地が少しずつ解消される様子も紹介するなど、農地の大切さも伝える。

種まき作業に取り組む委員と事務局職員

 今年、活動も7年目を迎え、実を結び始めた。周辺の農地所有者からも認知され、隣接する遊休農地の利用の申し出が増えている。所有者にも作業を手伝ってもらうなど、地域を巻き込む形で活動を実施。面積も約10㌃から約40㌃に増え、ヒマワリは2万本になるなどこれまで以上の規模になった。所有者には今後の農地の貸し出しについても協力を得るよう調整し、担い手など次代の農業者が耕作できる環境づくりにもつなげている。
 「こうした地道に見える取り組みこそが地域の農業・農村を支えると信じてやってきた。地域の人の信頼を得て、地域参加型となりつつあるこの事業は「地域計画」にも必ず活かされるものだと思う」と宮脇会長は話す。
 今後は、自治会組織にも参加を呼びかけ、活動の輪を広げていく。また、遊休農地での赤トウガラシ栽培で経営発展にも取り組むなど、次の一歩へも踏み出している。