新生農委 農委機構と中間機構の連携 岩手 農業会議・農業公社

 農業が盛んな土地柄で知られる岩手県は、本州最大の面積を誇り、広大な農地を有する。だが農家の高齢化や担い手不足が進み、県内各地の農地を守るには、その集積・集約化が重要な課題だ。
 2014年度にスタートした農地中間管理事業の推進母体、農地中間管理機構(岩手県農業公社、小原敏文理事長)によると、事業開始から2年で中間機構は約8千ヘクタールの農地を借り入れ、うち約7500ヘクタールを地域の担い手へ転貸した。
 事例のなかには、基盤整備事業の導入を契機に複数の集落営農組織が一つにまとまって法人化を果たし、その法人へ478ヘクタールの農地が集積されたものがある。大規模に農地が動いたケースだが、一方で面積は数十アールと小さいながらも、耕作放棄地の解消を足がかりに集積が進んだ事例もある。取り組みはさまざまだ。
 ただ、条件不利な農地が多く、平場よりも担い手不足が深刻なために合意形成が進みにくい中山間地域では、なかなか事業展開できない課題もある。
 今後は、いかにこうした中山間地域へアプローチできるかが事業成果の是非だけでなく、同県農業の未来にも大きく影響しそうだ。
 農地の集積・集約化は基盤整備事業などハード対策との両立が重要な一方で、ソフト対策では、農地の出し手と受け手の掘り起こしや合意形成に尽力するキーパーソンの存在も重要な役割を担う。
 そこで農業委員会ネットワーク機構(岩手県農業会議、佐々木和博会長)と中間機構が連携し、キーパーソン役を期待される農業委員と農地利用最適化推進委員、中間機構が雇用する17人の農地コーディネーター(各地区に駐在)の協力体制を強化しようと対策を打つ。
 具体的には、毎月開かれる農地コーディネーター会議で、農委機構の職員が現場の農業委員会から収集した情報をつなぐほか、農委機構が主催する研修会に農業委員と最適化推進委員、コーディネーターを集め、地域条件ごとにグループを作って意見交換できる場づくりを進めている。
 現場レベルでも、農業委員会の総会をコーディネーターが傍聴し、会の終了後には意見交換の時間を持つ取り組みも始まった。
 現場を熟知する農業委員、最適化推進委員と中間管理事業に精通するコーディネーターがタッグを組めば、強力な力になる。農地対策にちゅうちょする地域の相談役になれれば、地域の背中を押すことができる。

写真説明=農業委員・最適化推進委員、農地コーディネーターらが各地域の相談役になって地域の合意形成を進めていくことが重要だ