農地を活かし担い手を応援 独自の農地銀行活動を展開 山梨県 甲府市農業委員会

担い手へ集積、放棄地発生防ぐ

 山梨県の甲府市農業委員会(西名武洋会長)は、優良農地と担い手を結び付けるため、独自の農地銀行活動に日々取り組んでいる。また、市内の耕作放棄地を花畑に再生し、景観美化やミツバチの蜜源を確保する取り組みに協力している。

 2014年度に全国でスタートした農地中間管理機構に先駆け、同委員会は1982年から農地銀行活動を始め、担い手への農地集積と耕作放棄地の発生防止に取り組み、大きな成果を上げてきた。地域に精通した現職の農業委員やそのOBなどが「農地銀行推進員」を務め、農地集積や新規就農者への支援など農家と同委員会の仲介を担うほか、農地の利用状況調査の協力員として活躍している。
 最近の取り組みとして、情報量の乏しい新規就農者の農地確保を支援するため、市内を3ブロックに分け、新規就農者と地元の農地銀行推進員・農業委員とが一堂に会し、情報交換会を行っている。
 既に南ブロックで8人、中ブロック9人の新規就農者を招き、合同会議を開催。就農者は現在の経営や目標などを報告し、推進員と農業委員は地元の農地の現状や営農の特徴を就農者に助言するなど、活発に意見を交換した。こうした取り組みで参加した新規就農者には、地元農業委員の紹介などで約350アールの農地が確保されている。残るブロックも含め、今後も合同会議を開く予定だ。
 同委員会の山本俊一事務局長は「農業委員会法の改正で農業委員会活動は、農地利用の最適化がよりいっそう重視される。今の農地銀行活動に満足せず、意欲ある担い手のために優良農地の集積をより強化したい」と考えている。
 甲府市岩窪町の養蜂家・野村洋平さん(26)は、大学や企業と連携し、市内の耕作放棄地を花畑に再生し、景観美化やミツバチの蜜源を確保しようと「耕作放棄地のお花畑化プロジェクト推進協議会」を2015年4月に設立。同協議会には野村さんに加え、玉川大学ミツバチ研究センターの中村純教授、農薬メーカー・(株)シンジェンタジャパンと(株)雪印種苗が参加する。
 取り組みの過程で、同市内でも耕作放棄地の解消が課題だと知り、同委員会の協力が必要になった。野村さんの暮らす相川地区は、市内でも耕作放棄地が多い山付傾斜地で、同委員会の調査では約75ヘクタールが確認されている。
 そこで昨年9月、協議会メンバーと説明会を開き、地元農業委員や農地銀行推進員の協力を得て遊休農地や耕作放棄地を斡旋してもらい、農業委員会の同意を得た後、同市古府中町や下積翠寺の約1ヘクタールを借りた。クリムゾンクローバーやアンジェリアなどの種をまき、4月の開花を待つ。野村さんは「この取り組みが地域の役に立てばうれしい。植えた花々が蜜源植物として機能することを期待している」と話す。
 問い合わせ=甲府市農業委員会(電話055・237・5892)

写真上=新規就農者との合同会議

写真下=耕作放棄地を再生し蜜源に