地域計画策定へ集落の話し合いに力 鳥取・南部町農業委員会

 南部町農業委員会(恩田一秀会長)では、地域計画の策定のため今後の取り組みを具体化していこうと、集落の話し合いで地域や農業の実態・課題について掘り下げ、計画策定に向けて進んでいる。

エゴマの栽培や羊の飼養で遊休化を防ごうという動きもある

 南部町は米子市の南に位置し、2004年に西伯町と会見町が合併して誕生した。県内有数の古墳密集地帯で、大国主命(おおくにぬしのみこと)に由来する史跡が多く、律令国家以前から豊かな文化が栄える。水田地帯と特産の柿・梨・イチジクなどの樹園地が広がる人口1万人の町だ。
 同町農業委員会では、地域計画作りの中で、まずモデルとなる集落に出向き、話し合いの場を設けた。地域や農業の実態や課題について面的に見るためだ。さらに一歩踏み込んで多様な補助事業を活用できることも視野に入れて活動を進めた。
 農業委員や農地利用最適化推進委員で相談し、話し合いがスムーズに進む地区として赤谷集落を選定。23年9月に実際に農業委員、推進委員、事務局が出向き、一筆ごとに意向を確認、目標地図の素案を作り上げた。
 世帯19戸、75歳以上が住民の31.1%を占める典型的な山間地域の赤谷集落は、意向確認の結果、10年後、想像以上に農地が遊休化するとわかった。このことから、他の山間集落、平場の集落の実態はどうなのか、地域、集落の連携の必要性などが具体化した。さらには管理労力が軽減される活性化計画として「粗放的管理」の検討の必要性も感じられたという。
 また、地域計画、目標地図の素案作成に当たって、地域の枠を超えた取り組み、農産物の販路拡大も検討された。
 なぜ農地を守ることが必要か、家族や次世代にも十分な理解が必要ということで、小中学校との連携も模索している。

各集落で各委員を中心に話し合いが進められた

 昨年12月の県内ブロック別特別研修会(同県農業会議主催)で、同町農業委員会の亀尾憲司事務局長が取り組みの事例報告をした。地域計画、目標地図、さらには活性化計画策定の話は、参加した農業委員、推進委員の取り組みの機運を高めた。
 町農業委員会は今後、町内にある約80カ所の集落ごとに地域計画と目標地図を作成することを計画。亀尾局長は「地域事情がそれぞれ異なっているため、集落ごとに出向いて話し合いを進めている。コロナ禍もあり、農業に関し話し合う場が少なくなっているように感じている。〝協議の場〟を通じて、改めて集落の中で農業を取り巻く状況、10年後の未来図を共有して、そして農業をどう考えていくかを見つめ直すきっかけになればと願っている。農業委員会として活動を立ち止まることなく継続していきたい」と話す。