ワークショップ方式導入 地域計画策定へ話し合い  長野・大鹿村農業委員会

 大鹿村農業委員会(森下敏彦会長、63)では、地域住民の地域計画の話し合いにワークショップ方式を導入。望ましい将来の姿を実現しようと住民が主体的に取り組んでいる。

ワークショップ形式で開いた地域住民との意見交換会

 同村は長野県南部にあり、森林が89%、人口880人(2024年3月現在)の山間地。65歳以上が46%を占め、農耕地の少ない典型的な山村だ。
 地域計画策定の取り組みは、人・農地プランをベースに22年から検討するなど、早めに動きだした。村では、最優先で守りたい農地を決めることになり農業委員会が検討。大河原と鹿塩の2地区に絞り、議会、農業委員会、JA、井水組合、農業者代表などで構成する「村地域計画策定委員会」で決定した。
 22年10月、その2地区の耕作者70人に対し農業委員会が10年後の意向などのアンケート調査を実施。回答率は91.3%に上り、多くの住民の意見を集めることに成功した。
 アンケート結果を反映した現況地図をもとに23年1月、2地区の農業者と話し合った。地図の内容が正しいかなどの確認をしたが、参加者からは「プランと同じことをまたやるのか」など、前向きな意見は出なかった。

ワークショップに使った現況地図(左が森下会長、右が池田主査)

 確認した内容を反映した地図で24年1月17日、大河原地区で意見交換会を開いた。しかし、主に村からの説明だけになってしまったためか、参加者からは「誰かが何とかしてくれる」「人がいない」など消極的な意見が多く、まとまらなかった。
 農業委員会事務局の池田洸一主査は、参加者から意見の発信がしやすい場を作ろうと、県農業会議主催の研修会で得たワークショップ方式の導入を提案。全国農業会議所の澤畑佳夫専門相談員が提唱する方式で進めようと考えた。
 1月24日の鹿塩地区の話し合いは同方式で進行。その結果、参加者から「集落営農を作り、互いに助け合う組織が必要」「作物の集約化を進める」など、多くの意見が出た。
 今後、さらに話し合いを進め、出された意見を三つに絞る計画だ。
 池田主査は「ワークショップ方式は、初めての試みだったため雰囲気が分からず周囲からは本当に大丈夫かとの意見があったが、少し勇気を出して実行して良かった」と胸をなでおろした。また、「前向きの意見が多く出た。参加した住民が自分たちで地域の望ましい未来の姿を考える方法は、個々の思いが発言でき、互いに納得できるなど、良い効果が出た」と話す。
 森下会長も「今回の話し合いを通じて参加した住民に地域の将来について行政任せではなく、自分たちで考えていく機会になってほしい」と語る。