町農業の課題解決へフル回転 和歌山・上富田農業委員会

 上富田町は近年、農業者の高齢化や遊休農地の増加などが課題となっている。上富田町農業委員会(田上彰伸会長)では、町振興課と連携した地域計画策定の取り組みや、担い手と連携した遊休農地対策などを通じ、町農業の課題解決に向けて活動している。

調査結果を基に委員が集まり地図を作成

 上富田町は、県の南西部に位置し温暖な気候を生かした水稲やウメ、ミカンなどの栽培が盛んな地域だ。
 町は今年6月から8月末にかけて「地域計画(目標地図)作成にかかる農地の利用意向調査」を実施。町内で100平方㍍以上の農地所有者1305人(4794筆)を対象に、農地の現況や10年後の利用意向などを確認した。これまで、実質化した人・農地プランが二つ公表されていたが、地域計画の策定に向けて不足していた情報を追加で集めることが狙いだった。
 調査票は各戸へ郵送した。返信用封筒を入れ、データでも提出しやすいよう送信先の二次元コードも準備。8月末時点で、対象者の約6割に当たる774人(2817筆分)から回答を得た。
 町では調査結果を取りまとめ、農業委員・農地利用最適化推進委員の意見を踏まえながら地図を作成。今後は、11月から12月にかけて、担い手やJA、土地改良区との間で協議の場を開き、本年度末までに地域計画を公告する予定だ。農業委員会の山根康生事務局長は「積極的な協議が行えるよう、農業委員や推進委員には協議を中心的に進めてもらう役割を期待している」と話す。

農地の遊休化を防ぎ、刈った草は飼料に

 高齢化や他地域に住んでいることで農地の維持管理に苦慮している農地所有者は多い。山際郁広農業委員(62)は、隣接する田辺市で肥育牛を飼育する打越大吾さん(46)とタッグを組み、農地の遊休化を防いでいる。
 飼料用牧草の価格高騰に悩んでいた打越さんは、同業者が遊休農地の雑草を牛の飼料として活用していることを知り、旧知の山際委員に相談。山際委員は、町内の遊休農地所有者から草刈りの許可を得て、打越さんがその農地の雑草を刈り、遊休化も防げて飼料としても活用できる仕組みを作った。これまでに22筆、約1.8㌶の草を刈っている。
 打越さんは「子牛の頭数を増やしたいと考えていたが、コストの高騰が悩みだった。周辺住民から新たな遊休農地が紹介されることもあり、今後はさらに草刈りの面積を増やしたい」と意気込む。
 田上会長は「町農業を取り巻く状勢は厳しいが、関係機関と連携し、課題解決に向けて取り組みたい」と話す。