地域計画策定へ委員一丸で推進 鹿児島・指宿市農業委員会

 指宿市農業委員会(松木茂久会長)は地域計画策定のため、委員会内に「地域計画係」を設置。事務局職員や農業委員・農地利用最適化推進委員が一丸となって、地区の状況に合わせながら、さまざまな活動に取り組んでおり、地域計画の策定をめざしている。

(前列左から)大迫恵太推進委員と田代委員、(後列左から)向吉係長、宮﨑美里主査、吉元隆寿主査が協力し、小牧地区の話し合いを進めた。手にするのは同地区の年齢階層と意向を表した地図

 指宿市は、薩摩半島の最南端に位置する人口約3万9千人の市だ。畑地かんがい事業整備地区2千㌶の広大な畑地を生かしたオクラ、ソラマメなどの野菜生産と畜産が盛ん。農業従事者数は約1900人と直近5年間で2割減、65歳以上の高齢化率も52%に達するなど課題もある。
 同市では2023年、「将来の農地を考えて、農業委員会が主体となって取り組もう」と地域計画係を設置。担当職員3人のうちの1人、主幹兼係長の向吉真一さんは「目標地図の素案から完成まで同じ担当が関わるため説明や調整がスムーズ。農業委員会内に設置したことで協議の場で委員が一参加者とならず、主体的に取り組めることも利点」と語る。話し合いの進行役は職員などだが、各委員も話し合いへの参加呼び掛けや課題の提供などに率先して取り組む。
 同市では、22地区で地域計画の策定を予定する。今年7月までに21地区で「未来を語る座談会」と題した話し合いを実施し、延べ237人が参加。農地の話に特化せず、地域の困りごとを中心に話し合いを展開した。
 畑作主体の旧山川町や旧開聞町では、受け手となる担い手が複数の地区にまたがって出作・入作するため、あえて複数地区の話し合いを同一日、同一会場で行い、対象者が参加しやすいようにするなど工夫した。

小牧地区での話し合いの様子

 話し合い活動のベースは、同市新西方地区の人・農地プランの実質化の取り組みだ。同地区では、高齢化率4割超えに危機感を抱いた住民らが率先して年齢階層別の地図を作り、話し合った。地区内だけでなく入作者や新規就農者とも意見交換し、地域の課題解決や将来ビジョンを共有した。
 市は新西方の事例を他地区で紹介。今年4月、小牧地区で若手農業者も含め27人が参加し話し合いを開いたが、「これまでは、圃場でも会釈程度だったが普段から声をかけやすくなった。今後も定期的に話し合いの場を作ってほしい」との声も寄せられている。
 小牧地区担当の田代繁樹農業委員(56)は「話してみると、同じような問題を抱えていることが分かった。課題が同じなら解決策も同じ。皆で取り組めば展望が開けるのでは」と手応えを語る。
 県農業会議は「地域計画策定を農業委員会が主体的に推進する指宿市の取り組みは素晴らしいが、すべての市町村で同じようにできるわけではない。それぞれの実情に応じて役割分担しつつ、市町村と農業委員会、関係者が連携を密にして24年度末までの地域計画策定のミッション達成を」と期待を寄せる。