都市農地の利活用へ法律・制度を周知 東京・立川市農業委員会
立川市は都市的地域にありながら、東京・多摩地域の農業の中核を担っている。立川市農業委員会(鈴木豊会長、農業委員14人、農地利用最適化推進委員3人)では、都市にある農地の貸借について制度の創設や法律の周知を進めるなど農地の利活用を進め、さらに立川産農畜産物の消費拡大にも力を入れる。
立川市は多摩地域の中核都市として、さまざまな産業集積が進んでいる。一方、住宅地に残る生産緑地や横田基地近くに広がる市街化調整区域には、合わせて約240㌶の農地がある。
同市農業委員会では、相続による農地の減少などが進む中でも、経営の維持や拡大をめざす農業者に農地をあっせんしようと活動する。
2022年には「農地バンク制度」を創設。市街化区域・市街化調整区域によって貸借の手続き(都市農地貸借円滑化法、農地中間管理事業法)が異なることを周知するなどの活動を進めている。
農地を相続したものの、所有者に農業経験がないため耕作できず農地パトロールなどで指摘の対象となる案件が今後、増えると想定している。農業委員会では対応を考え、耕作しきれない生産緑地を市内の植木生産者に紹介し、規模拡大につなげた。今年2月には農地バンク制度を活用して市内初となる非農家出身女性の新規就農者が誕生するなど、多様な担い手への農地貸借も進む。
今年5月現在、市内の農地貸借のマッチング件数は11件(3.18㌶)。農業委員会事務局の担当者は「農業委員会の活動により制度への理解を進め、さらなる農地の利活用と経営支援につなげたい」と話す。
同市は、野菜や果樹、花き、植木、畜産など、都内でも有数の農畜産物の産地だ。「立川農業振興会議」は、各生産組織や農業委員会など市内の農業関係団体の横断的協議体として発足。21年2月には同振興会議が実施主体となり、ブランドマーク「立川印」が誕生した。
市内農業の価値と魅力を広くPRすることを目的に、市内産農畜産物の包装・販促資材に立川印を活用する。立川印は現在、市内産の農畜産物を取り扱う市内店舗などに波及している。
さらに、市商店街振興組合連合会が「たちかわ産食材使用店」マップを作成するなど、農業者を含む地域事業者と行政が二人三脚で市内農業のブランド化を進めている。
市産業振興課農業振興係の小室正広係長は「魅力ある立川の農業を発信し、知ってもらうことが立川市全体のイメージ向上にもつながる。市の農業を市民とともに盛り上げ、支えたい」と話す。