新生農委 新体制、三位一体で活動 島根・出雲市斐川町農業委員会

 島根県の出雲市斐川町農業委員会(竹内辰雄会長、77)は遊休農地の未然防止を活動の重点に据え、毎年2回の農地パトロールを実施。他の農業関係団体と密に連携しながら農地集積にも積極的に取り組み、地域が掲げる「一町一農場構想」の実現を目指す。
 出雲市との合併後も旧斐川町を範囲として設置された同町農業委員会は、今年6月に新体制に移行。農業委員16人のほか農地利用最適化推進委員を15人確保した。農地パトロールの際は地域を四つの小学校区で分け、事務局職員も加えた三位一体の班編制で臨む。
 8〜9月に全地区で一斉にパトロールを実施。草刈りがされていないなど管理が不十分な農地の所有者には、委員が指導する。その後、10〜11月に再び現地に赴いて状況をチェックし、改善されていない場合に遊休農地として計上する。
 二重のパトロール体制ときめ細やかな指導のかいあって、約2600ヘクタールの農地面積に対し1号遊休農地は6ヘクタール(2015年度)にとどまる。竹内会長は「推進委員が増えたことで、今まで以上にくまなく目が行き届くようになるのは確実」と期待する。
 県内有数の穀倉地帯である同地域は大半が平野部で、山間部以外の圃場整備はほぼ完了。担い手への農地集積率も高く、現在2ヘクタール以上の110経営体に水田の76%を配分する。
 集積計画を取りまとめるのは、農地利用集積円滑化団体の(公財)斐川町農業公社だ。地権者から貸付先を指定しない白紙委任を受け、担い手にあっせん。農地を集約するため、利用調整にも取り組む。公社の事務局は農業委員会と同じフロアにあるため、連携が取りやすい。
 50年以上前から行政や農業関係団体で「斐川町農林事務局」をつくり地域農業の推進に取り組むなど、農業を通した結びつきが強い同地域。4年前には、旧町全域を対象に人・農地プランを策定した。
 プランでは、地区の農地を一つの農場と捉え、作付け計画から土地利用までを斐川町地域一本で計画する「一町一農場構想」を目標の一つに掲げる。現場で農地の利用状況を確認する農業委員会や、集積・集約化の実務に当たる公社の働きは、この構想の実現に不可欠だ。
 一方、集積が進むほど農家数が減少し、担い手が限定的になる課題もある。農業委員会の佐藤文男事務局長は「離農した地権者にも草刈りを手伝ってもらうなど行政からも働きかけ、これまで農業が支えてきた地域社会を維持していくのが重要」と話す。

写真説明=遊休農地が多い地区は特に重点的に見回る