農業委員会 タブレットの導入進む

 農地パトロール(利用状況調査)の円滑化を目的に、各地の農業委員会でタブレット端末の導入が進んでいる。現在位置や農地の場所が明確に分かるため、調査時間が大幅に削減され、調査の結果もその場で簡単に記録できる。遊休農地の解消法の検討など、その後の「農地利用の最適化」に集中できるようになり、農業委員会活動の強化に役立っている。

 茨城県の小美玉市農業委員会(佐久一雄会長)は、昨年4月1日の新体制移行に伴い、農地パトロールにタブレット端末を導入した。従来、4カ月かかっていたパトロールは2カ月に短縮。委員会では「最適化の取り組みに集中できる環境が整った」と効果を話す。
 タブレットは、ノートサイズの大きさで、首からかけて持ち運びが可能だ。画面上には現在位置と農地が1筆ごとに地図で表示される。遊休農地は色分けされていて、対象の農地に指で触れ、利用状況を入力すると調査完了だ。
 パトロールは、農業委員と農地利用最適化推進委員が2〜3人の班を作って実施した。遊休農地は1班当たり40筆あり、各班は慎重に見回った。調査が終わると、事務局がタブレットを回収し、システム業者を通じてデータ化し、全国農地ナビシステムに反映する予定。情報の素早い共有にも役立ちそうだ。
 導入前は農業委員27人が、遊休農地が記載された100枚以上の住宅地図と地番図ファイルを持ちながら、苦労してパトロールしていた。タブレット導入に加え、農業委員24人、農地利用最適化推進委員22人と人員が増加したこともあり、例年の半分の期間でパトロールを終えた。
 心配されていた操作方法の習得は、講習会や地区ごとの説明会などを行うことで、次第に解消していった。「操作方法を習得したら、より便利になり、調査がとても楽になった」と田中利文会長職務代理(67)は話す。
 タブレットの費用は、職員の残業代を含めて、臨時職員を雇うよりも安いという。
 市内の耕地面積5470ヘクタールのうち遊休農地面積は103ヘクタールと約1.9%を占め、高齢化によりさらなる増加が見込まれる。タブレットの導入後から、遊休農地の判定を細分化し、山林化など再生利用が困難と見込まれる遊休農地はタブレットで農地の状況を撮影。写真は利用状況とともに地番ごとで登録できるため、後日、非農地判定をする際に、農業委員の判断材料にし、順次通知を進めていく予定だ。
 再生利用が可能な遊休農地や保全管理地をいかに耕作に結びつけるかが次の課題だ。例年行っている農地所有者への通知に加えて、地区の農業委員と農地利用最適化推進委員、事務局が農地の状況を踏まえて話し合い、地区でのあっせんなどを行う方針だ。農業振興地域にある遊休農地は、耕作放棄地再生利用緊急対策交付金などを利用して、耕作可能な農地への再生を目指す。
 佐久会長(75)は「農地パトロールに関連する作業が大幅に効率化できた」と導入の成果に目を見張る。「意向調査が終わり次第、地区で最適化に関する話し合いを進めていきたい」と意気込む。

写真上=「3回使ったらだいぶ慣れた」と同市の農業委員(左から田中会長職務代理、細山美好委員(60)、飯塚一夫委員(74)、幡谷邦雄委員(61))

写真下=パトロールにタブレットを利用する田中会長職務代理(右)と小野一也農地利用最適化推進委員(57)