新生農委 条件不利克服へ地域密着 岩手・岩手町農業委員会

 岩手県の岩手町農業委員会(松本良子会長)が、地域密着の活動で農地集積や遊休農地の未然防止に成果を出している。同町は大半が中山間の畑地。集積や遊休化防止には不利な条件ながら、農業委員は積極的に地域へ入り込み、マッチングや合意形成をリードする。昨年からは全戸への経営意向調査を始め、農地中間管理機構と連携した集積も進めている。
 同町は「人・農地プラン」の先進地。全35地区でつくり、今は8地区に集約した。地区担当の農業委員は、地域での説明会から検討会まですべて参加し、合意形成を主導してきた。このプランが設計図となり、各地域で集積が進んだ。
 県で最も早くプランを策定した一方井地区では、2014年度に地区農地の7割以上となる31ヘクタールを地区営農組合に集積。プランの見直しに合わせ集約も進め、中山間地では貴重な受け手の効率化を支援した。
 土川地区では、草地組合の所有地など37ヘクタールを拡大意向の野菜農家などに集積した。近年ほとんど活動がなかった草地組合の所有地は46人の共有名義となっていて、委員会では相続者もたどりながら、過半数から同意を取り付けた。
 今年度は集積と同時に水田の汎用(はんよう)化も行う。上浮島地区は農地中間管理事業を利用して、暗きょ排水整備を実施した。地区の集積率は39%から62%に上がり、中心的な経営体も7経営増えた。
 松本会長(62)は「常に現場をみて、地域の意見を聞く。農業委員はみんな、地域に入り込んで活動している」と、こうした集積の背景に農業委員の努力があることを指摘する。
 委員は日ごろから地域農地の利用状況にも目を配り、遊休化には早めに手を打ってきた。遊休農地は15.5ヘクタール、遊休農地率は0.28%に抑える。
 昨年からは農家調査に合わせて全戸に今後の経営意向を確認している。回答の多くは「現状維持」「規模縮小」だったが、野菜農家など一部からは「規模拡大」の意向も示された。事務局の滝川勉主幹は「意欲のある農家さんが分かり、今後の方向性がよりはっきりした」とさらなる集積に手応えを感じている。
 7月には新体制への移行を控える。農地利用最適化推進委員を16人置き、体制は今より7人増員する見通しだ。現場第一主義は変えず、農業委員と推進委員がチームで連携して動くことを想定する。
 松本会長は「岩手町にとって農業はなくてはならない産業。農業委員会には次の世代に農業をつなぐ責任がある」と決意を示す。