農地を活かし担い手を応援 農地の集積を推進 長野県 伊那市農業委員会

 長野県伊那市では昨年8月に、市内12地区の「人・農地プラン」を見直し、担い手へ農地集積を推進している。同市東春近地区では、各集落の農地の受け皿となる担い手や法人に、農地中間管理事業などを活用して農地を集積。現在、地区内の認定農業者と法人の利用権の移転(交換)による面的集積の調整も進む。同地区の農業委員である田中哲雄・同市農業委員会長は、その利用調整に力を注いでいる。

 東春近地区には九つの集落がある。1集落1法人の形態をとる田原区の(農)田原と榛原区の(農)イーストテラス、他の7集落の受け皿となる(農)はるちかが設立されている。
 田原区では2011年、2012年の2年をかけて17ヘクタール(220筆)の山手の荒廃地を70区画に整備した。その他の農地も含め、農地中間管理事業を活用し、2014年度、2015年度中途で(農)田原と7人に71ヘクタールの利用集積をした。(農)田原には48.5ヘクタールが集積された。
 一方、(農)はるちかには、2015年度中途で農地中間管理事業で103ヘクタール、農地利用集積円滑化事業で17ヘクタールが利用集積された。
 現在は、地区内の認定農業者と法人の利用権の移転(交換)により、面的集積の調整を図っている(写真(上))。
 「農業振興センター(集落営農機能)がなければこのような利用調整はできなかっただろう」と田中会長。
 ただ、高齢者や入院療養中の貸し出し意向者の中には、相続人に負担にならないようにと長い利用権設定期間を望まない人もいたという。
 このような活動を経て、中間管理機構の地域集積協力金に関する協定書を昨年12月に調印した。今後は、法人経営を軌道に乗せ、農作物の加工など6次産業化への取り組みも視野に入れている。
 伊那市では、現在の農業委員の任期が3月末に切れる。4月1日から農業委員数は34人から24人になり、新たに9人の農地利用最適化推進委員の委嘱が予定されている。
 田中会長は、農地法など法令に基づく審議には、推進委員に議決権がないため、説明が必要な農地の権利設定や移転案件の時に参加を求めることになりそうだとし、「農地の利用集積活動などは農業委員と最適化推進委員が同じ活動をすることになる。利用集積の取り組みを強化していきたい」と語った。

地域の概況
 伊那市は南アルプスと中央アルプスに囲まれ、中央を流れる天竜川など、自然豊かな農村地帯。風土は冷涼で空気が澄み、晴天率が高く、標高は600メートル〜1100メートル。標高差を生かして水稲、麦、大豆、ソバ、雑穀、野菜、果樹、花卉、キノコ、畜産など多彩な作物が栽培されている。

写真説明=耕作図で利用権の移転・交換などを検討している田中会長