都市農地の保全に尽力 農委組織で農業のあるまちづくりめざす 大阪府農業会議

 昨年成立した改正生産緑地法や、今国会で審議中の「都市農地の貸借の円滑化に関する法律案」を踏まえ、大阪府農業委員会組織では、新たな都市農地の保全のための施策の拡充や税制上の措置についての情報提供に力を入れている。農業委員会による意見提出を通じて、各市町村に生産緑地地区の追加指定や、改正生産緑地法を踏まえた面積要件の引き下げについての条例制定を促進。大阪の実情に即した都市農地の保全に努め、農業のあるまちづくりを進める。

 大阪府内の農地は1万3100ヘクタールと東京に次いで全国で2番目に少なく、農家1戸当たりの平均経営耕地面積は35アールと全国最小であり、農地も小規模で分散しているのが実情だ。
 府内農地のうち、約3割が市街化区域内農地であり、62%が生産緑地地区に指定されている。また、農業とのふれあいを求める府民のニーズも高い。
 このため、相続税納税猶予適用を受けている生産緑地について市民農園利用など、その貸借を認め、都市農地を保全したうえで引き続き納税猶予が適用されるような制度改正が強く求められていた。都市農地の貸借に冠する法律案を心待ちにしていた高田武さん(67)もその一人。大阪市で約20アールの生産緑地を所有する同市の元農業委員だ。
 大阪市の生産緑地は、自ら営農するケースだけでなく、貸農園などの形で保全されている例も多い。
 所有者の高齢化が進み、必ずしも本人や子世代が耕作できるか分からない中、高田さんは「できるだけ多くの農地を市内に残すためにも、所有者が引き続き相続税の納税猶予を受けるためにさまざまな選択肢をとれることが重要」と話す。

 こうした課題を踏まえ、大阪府農業会議は3月開催の市町村農業委員会会長会議で、「『都市農業振興基本法』『改正生産緑地法』を踏まえた農業委員会活動の強化に関する申し合わせ」を決議。農委組織を挙げて、農業委員会法第38条に基づく市町村長への意見提出を行い、都市農業振興基本法・基本計画に基づく地方計画策定や生産緑地指定の下限面積を引き下げる条例制定を要請することとした。
 これまでに、14農業委員会が意見書を提出。寝屋川市、茨木市、高槻市、箕面市、東大阪市の5市が面積要件緩和の条例を制定した(4月20日時点)。
 また、農業会議は、JAグループと連携して、改正生産緑地制度啓発リーフレットを5万部作成。農業委員会・JAとともに、各地で農業者向けの説明会を開き、都市農地の貸借に関する法律案など新たな制度の周知徹底に努めている。
 法改正に伴う「特定生産緑地」の指定は、生産緑地の所有者の同意が前提となっており、指定後30年が経過するまでに手続きを行う必要がある。指定申請期日までに、関係農業者の機運をどれだけ盛り上げられるかが、今後の大阪農業の活性化を左右すると言っても過言ではない。
 府内農委組織では、今後も引き続きJAグループと連携して管内農業者への制度の周知、また指定意向のある所有者に対し、早期の手続きを行うよう働きかけていく。

写真上=制度改正を心待ちにしている高田武さんの生産緑地

写真下=周知に向けて作成されたリーフレット