農業衰退に歯止めを 農業委員立ち上がり協議会設立 静岡・広野地区農地利用推進協議会

 静岡市駿河区の広野地区では、高齢化・後継者不足などにより近い将来、同地区の農業の衰退が懸念されていたため、2014年に当時静岡市の農業委員だった杉山利彰さん(現在は農地利用最適化推進委員)を含む地区の地権者で「広野地区農地利用推進協議会」を設立した。今回はこの協議会の取り組みを紹介する。

 広野地区では、約35ヘクタールの低平地で桃やミカンなどの果樹が集団的に栽培されている。特に桃は“長田の桃”ブランドで東京市場などに出荷され、高い評価を得ており、かつては全国一の早出し産地としても知られていた。
 現在は80戸の農家が年間約60トンの桃の生産をしているが、土地の大半の間口が3.5〜7メートルと狭く、奥行きが50〜200メートルと極端に細長い短冊状の農地となっており、四方共に道に接していない閉塞(へいそく)農地も点在している。作業勝手が悪く、そのことによる重労働と生産効率も劣る営農環境のため、耕作放棄地の増加は年々大きな課題となっていた。

 そこで、広野地区農地利用推進協議会の初代会長の杉山利彰さんを中心に県中部農林事務所、JA静岡市の関係機関が連絡調整会議を開き、広野地区の農地、1440筆、約35ヘクタールの農地の集約を図ることにした。
 手始めに該当する全ての農地を対象とした利用状況調査を行い、今後における耕作などの意向を把握。その結果を「耕作を継続」「農地を売りたい」「貸したい」「集積したい」など項目ごとに図面上に色分けをした。色分けにより地権者、耕作者が将来に向けて、どのような意向をもっているかが一目で分かるようになった。

 その後は具体的な農地集積に向けて、該当する農地を9ブロックに分け、それぞれの地権者を集めて集約構想の案について説明会を開き、意見交換している。
 しかし、農地の集約・耕作放棄地の防止や担い手へのシフトなど大筋で理解してもらっても、各論になると「果樹は植栽後に結実までに数年間を要する」「施設が移転できない」「自分の土地に愛着がある」などの理由でなかなか踏み込めない地権者も多く、調整はかなりハードルが高い。
 「当初から一朝一夕ではできないとは思っていたが、これほど苦戦するとは思わなかった。ただ、個人同士の思惑が一致する可能性は大いにあると思うので、JAを窓口として、協議会のメンバーが現場と窓口のパイプ役として情報の収集に当たりながら、農地の集約を推し進めていきたい」と杉山さんは意欲的だ。

写真上=広野地区の農地集約に意欲的に取り組む杉山利彰さん

写真中=細長い短冊状の農地

写真下=地図を色分けし意向を把握