農地利用の集積・集約化 山形・酒田市農業委員会

 注目を浴びる農地中間管理事業で大きな成果を出す山形県酒田市農業委員会(五十嵐直太郎会長)。事業開始以降の2年間で約1914ヘクタールを集め、そのうち約1903ヘクタール(初年度約234ヘクタール、次年度約1669ヘクタール)を担い手につないだ。
 同市では、2014年11月に「酒田市農地集積センター」を独自に設立した。センターには、1995年の発足から約20年間続けてきた「農地銀行」の機能を移管。これまで築いた地域一丸の体制をより強固なものにした。
 センターは農業委員会に事務局を置く「本店」と旧JA単位の16カ所の「支店」、公正な立場から参考賃借料を算定する「参考賃借料検討協議会」で組織する。本店には農業委員会会長、支店には地域代表の農業委員がそれぞれメンバーに入り、一筋縄ではいかない現場での利用調整をリードした。
 支店(農業委員、JA役員、土地改良区役員、農業共済組合役員など)は地域のマッチング案の作成と現場での調整作業を担い、本店(農業委員会会長、JA役員、支店代表)がマッチング案の最終決定と市全体の調整を行う。地域農業のリーダーが集まる支店には各集落の意向が自然と集まり、この考えを尊重したマッチング案が組まれていく。生産現場の意向を反映する仕組みこそが酒田市が集積を進める秘けつだ。
 五十嵐会長は「センターの核は支店での地区会議。これまでの農地銀行の取り組みや人・農地プランをベースにしているため、マッチングもうまくいく」と分析する。
 同市の集積率は2014年度末で約71.4%。経営耕地が約1万2200ヘクタールと広大ながら約8714ヘクタールが担い手に渡ったことになる。
 昨年度の配分面積が大きいのは集落営農組織の法人化がその要因。20組織(約1554ヘクタール)が新たに法人化した。地域在住の構成員が農地の出し手となり、法人となった集落営農に預けるという流れが続いた。同市北平田地区では14集落が入った大型の法人ができ、一気に約413ヘクタールが集積した。今年度も相当数の法人が立ち上がる見通しで、国が掲げる「10年間で担い手に8割の集積」という目標にも手が届きそうな勢いだ。
 一方で、集積を進めれば進めるほど、事務局には膨大な事務作業がのしかかった。JAの支店窓口や農業委員会事務局では担当者が休日出勤しても作業が間に合わず、見かねた五十嵐会長や農業委員が市役所に集まり、書類確認を手伝ったほどだ。
 佐藤まゆみ主査は「機構に提出する農地のマッチング案と農用地利用配分計画案のように内容がほぼ同じ書類も多く、事務効率が非常に悪い。全体的に簡素化しなければ、従来の農業委員会業務に支障が出てしまう」と改善を訴える。
 五十嵐会長も「中間管理事業には現場目線が欠けている。信頼関係こそが農地を動かすということを忘れているのではないか」と苦言を呈する。