耕作放棄地の発生防止・解消 静岡・島田市農業委員会

 耕作放棄地対策の多様な取り組みとその実績が高く評価されて2014年度耕作放棄地発生防止・解消活動表彰で農林水産大臣賞を受賞した静岡県島田市農業委員会(増田重男会長)。最高賞受賞の朗報は同委員会の活動意欲をますます刺激して、受賞後も新たな取り組みに乗り出している。
 農地の遊休化を食い止めるには、整地とともに区画整理を進めて一定規模の面的集積を図り、作業の効率性を上げて担い手につなぐことが必須だと15年度から取り組み始めたのは農地中間管理機構(機構)と連携した解消事業だ。
 その一つが旧川根町高日向地区の1.5ヘクタール(地権者8人)の耕作放棄地。離農が進み地区の半分が耕作放棄地となったが、小さく不整形な農地の集まりで、数年間借り手探しに苦慮していた。
 そこに借り手として手を挙げたのが農業委員の守谷能精委員(59)だ。農地相談員の秋山初次さん(71)ら事務局や市農林課の調整で国と県の耕作放棄地関連交付金事業と農地中間管理事業の採択の見込みの立ったことが守谷委員の決断を後押しした。
 茶と野菜の複合経営に取り組む守谷委員は、遊休化した茶園をキャベツとコンニャク畑へ転換しようと検討。同地区の標高の高さは出荷時期をずらせ、糖度の高い野菜づくりに向く。キャベツはカット野菜など業務用の高い需要が見込まれ、地元直売所と出荷契約の話もついた。
 事業の採択は決まり、耕起・整地や区画整理のほか、耕作機械が入るよう農道や排水路の整備まで着手できることになった。機構活用による機構集積協力金も基盤整備と鳥獣害対策の費用にまわす。
 「やる気のある借り手が出てきたら、地権者との交渉や補助事業の活用など農業が継続できるように必要なサポートをするのがわれわれの役目」と断言する秋山相談員。
 他にも、離農によって遊休化が懸念される農地5ヘクタールをモデル地区に区画整理と基盤整備を進め、集積を希望する若手茶農家につなぐなど、機構を活用した耕作放棄地関連事業が同時に4事業も動き出している。
 増田会長は同市の活動の特徴を「農家以外の人も含めてたくさんの人を巻き込んでいること」だと話す。
 会長自らも解消農地を活用した市民農園(79区画)を運営するが、その利用者は近隣の地元住民ばかりでキャンセル待ちが出るほど人気がある。農業の楽しさを体験できる場であり、耕作放棄地の増える農業の実態を広く伝える場でもある。
 担い手法人の(株)ハラダ製茶農園は、農業委員会が取り組む幾つもの解消事業に関わるなかで耕作放棄地への危機感とその解消の重要性を高く認識するようになった。遊休農地の草刈りや季節の花の植栽による景観作りを自主的にボランティアで取り組むほか、今年の春からは同社が解消した耕作放棄地で幼稚園児の食育・食農事業も展開する。
 「農家だけでなく地元住民や企業も巻き込んで、それぞれが当事者意識を持って取り組めば、幅広い活動ができて成果も出ます」(秋山相談員)。
 4月からの新制度で農業委員会に求められる「農地利用の最適化」では耕作放棄地対策は重点活動の一つ。意欲ある農業委員と相談員の活躍によって、今後も同市の耕作放棄地の発生防止・解消活動は広がりを見せ、確かな実績を出していくだろう。

写真説明=市民農園の前で増田重男会長(左)と秋山初次相談員