企業の参入と経営を支援 大分・臼杵市農業委員会

 積極的な企業の農業参入を進める大分県臼杵市では、2006年の第1号を皮切りにこれまで28社が参入した。
 参入企業への耕作放棄地のあっせんや地域住民との調整に汗を流す同市農業委員会(疋田忠公会長)は、参入企業同士で農地や労働力の効率利用などを進める「うすき農尊協同組合」の事務局も務め、経営の安定化を支援。耕作放棄地は、参入企業の活用により年々減少している。
 同市は、稲作やカボス、施設野菜のピーマン、ニラ、トマト、イチゴ、露地のジャガイモ、ダイコン、ニンニクなどが盛んな農業地帯だ。「有機の里」を宣言し、市を挙げて安全・安心な農作物づくりに力を入れている。
 農家の規模拡大や法人化も進んでいるが高齢化は深刻だ。多様な担い手、雇用の受け皿として市が期待するのが企業の農業参入だ。畑地帯ではかんがい事業が行われていることから、野菜や茶などでの参入を希望する企業が多い。
 企業から参入意向が示されると、農業委員会は農地台帳で利用できる耕作放棄地を確認し、利用権設定に向けて地権者との協議に入る。大規模だと地権者が20〜30人にものぼり、地域全体の理解を得るために何度も地区説明会を開催する。
 農業委員会は、08年度からGPS機能付きでタブレットによる現地入力もできる農地地図情報システム(GIS)を導入しており、活用可能な耕作放棄地の最新の状況が確認できる。農地台帳には補助事業の利用状況や贈与税納税猶予、農業者年金の特定貸し付け農地の情報なども網羅され、農地利用の適正化に役立っている。
 農地パトロールなどを踏まえた農地台帳の情報は詳細だ。パトロールは各委員が担当地区を日常的に見回り、5月、11月、2月には市全域で一斉に行う。7〜9月には農地利用状況調査を実施。11月には農地法3・4・5条(売買、貸借、転用)の過去3年分の追跡調査を行い、適正に管理されているかを確認する。2〜3月には第1種農地の水田裏作作付け調査も行う。
 農業委員会は、委員23人で年間25ヘクタールの利用権設定目標をたて、委員全員が年間を通して濃密な活動を展開している。耕作放棄地の解消も、14年度は3ヘクタールの目標に対して8.1ヘクタール、15年度は同3ヘクタールに対して5ヘクタールを達成している。
 参入した企業は、地元の建設企業や全国、九州全域で農業を展開しているワタミファーム、JR九州ファームなどさまざま。経営作目も米麦などの土地利用型から施設園芸、カボス、茶、ジャガイモなど幅広い。耕作放棄地は参入企業の活用により、08年の120ヘクタールから現在は35ヘクタールまで減少している。企業の規模拡大意欲も強いが、耕作放棄地以外は認定農業者への集積を優先するため、参入企業にとって農地の有効活用が新たな課題となっている。
 このため、参入企業12社が参加して昨年誕生したのが「うすき農尊協同組合」だ。各社の合計経営面積200ヘクタールを無駄なく使うため、夏・冬作での利用調整や各社ごとの分散農地の集約、有機と慣行栽培農地のゾーニング(区分け)、労働力の調整、販売ルートの共有、JGAP(生産工程管理)の取得などを進めている。農地の利用調整が絡むため農業委員会の役割は大きく、事務局として組合の運営を担当する。
 農業委員会事務局の高田教一次長は「農地をより効率的に活用するため、未加入企業の参加も促す」とし、参入企業との連携強化を図ろうとしている。