食育活動通して 都市農地の保全 東京 多摩市農業委員会

 東京のベッドタウンとして発展してきた多摩市は、市街化区域の中で農地と住宅地が混在した地域となっている。多摩市の農業は住民に密着した直売を中心に少量多品目の野菜生産をする農家が多い。多摩市農業委員会(小暮和幸会長)は、市民が農業に関わることができる事業を実施していくことで、都市農地の保全に取り組んでいる。

 「市内農家や消費者からの理解を得て、各関係機関と協力しながら農業を振興し、多摩市の農業が農業後継者や担い手にとって魅力あるものとなってほしい」と小暮会長。
 同市はニュータウンの開発などで、農地が減少してきた。そのような中でも市民の地産地消や安全・安心な農作物に対する関心は高いという。
 同市農業委員会は都市農地の保全に向け、さまざまな取り組みを行っており、その成果として同市が生産緑地法の改正を受けて条例改正をし、指定下限面積を300平方メートルに引き下げたことなどがある。

 市民への農業理解に向けては、1993年から行っている「家族体験農業」がある。この活動は、農業委員会が市内5カ所の児童館と共催している事業で、子供とその家族が年間を通してサツマイモや落花生など野菜を植え付けから収穫まで体験できる。毎年100人ほどの参加があり、農業委員が講師を担当している。収穫作業の日には交流会を開催し、取れたての野菜を使った料理が振る舞われ、新鮮な味を楽しめる。
 また、1995年から行っている「農業ウォッチングラリー」では、市民と農業者が市内の農地を歩いて巡り、市民が収穫体験する。終了後には、市内産の野菜を使用した豚汁を食べながら、クイズ大会を開く。人気が高い企画でリピーターも多く、毎年50人ほどが参加する。
 同市農業委員会はこうした活動を通じて、市民が実際に農業を体験できる貴重な場を提供している。中には農業に興味を持ち、一般の市民が農作業を手伝う援農ボランティアを希望する人も出てきた。その数は年々増えており、市民と農業との関わりに多様性が生まれはじめているという。
 同市の担当者は「さまざまな食育活動や農業体験イベントを通して市民の農業に対する意識は変わりつつある。これからも工夫を凝らした活動を行い、都市農地の保全に取り組んでいきたい」と話している。

写真上=家族体験農業

写真下=農業ウォッチングラリー