農地利用の最適化最前線(7) 一人だけでなくみんなで動く 佐賀・神埼市農業委員会

佐賀県の神埼市農業委員会(森義博会長)では「誰か一人だけでなくみんなで動く」ことを念頭に、農業委員と農地利用最適化推進委員の密な連携に力を入れる。市内13地区で農業委員と推進委員が「活動班」を結成し、二人三脚で現場活動を展開する。
同市農業委員会は2016年4月に新体制に移行し、農業委員13人、推進委員20人となった。農業委員の出身地区がちょうどよく市内に分散していたため、農業委員1人に対し、地区担当の推進委員1〜2人で活動班を編成した。
毎年の農地利用状況調査では7〜8月に各班が担当地域をパトロールする。問題があった農地は現地調査を重ね、9〜11月に結果を取りまとめる。「複数の目で判断できるのが班体制の強み」(事務局)だ。これ以外の時期にも、各班で日常的に遊休農地などの見回りを実施。遊休農地の所有者への戸別訪問なども積極的に行う。地道な働きかけの結果、2015年度に64.8ヘクタールだった遊休農地は今年4月には52.5ヘクタールまで解消した。
農業委員会全体が足並みをそろえるため、普段の班活動に加え、3カ月に1回程度のペースで農業委員と推進委員の合同会議も開く。さらに、合併前の旧町単位で推進委員の代表者を3人選んだ。必要に応じ会長・副会長との会合を設け、今後の活動計画などを協議する。
森会長(71)は市の中心部の神埼地区を2人の推進委員とともに担当。「各地区代表の推進委員は、地域に密着した活動に欠かせない存在。地元からくみ取った声を農地利用の最適化につなげるために、農業委員と推進委員がしっかりと話し合いながらやっていかなければ」と気合いを入れる。
各委員の活動実績をこまめに把握しているのも特徴だ。全国農業会議所が作った様式をベースに、事務局が改良した活動記録帳を使う。農地の巡回や戸別訪問、地元農家からのささいな相談事まで日々の業務を日誌のように記入し、毎月10日に提出。どんな取り組みにどれくらいの時間をかけ、どんな成果や課題が出たのかを見える化したことで、最適化活動への意識醸成に結びついている。
7対3の比率で平場と山間部が混在する同市。山間部は圃場整備が不十分など、地域ごとに悩みも幅広い。同市農業委員会では今後、地区の寄り合いや営農組合の会合など地域の話し合いに積極的に参加していく方針を固めた。地元農家の意向把握や集積のきっかけ作りをし、地域に合った対策を練っていく。新規就農希望者に農地情報を速やかに提供するために関係部局との連携を円滑化するなど、事務局でも具体的な計画を進めているという。
写真説明=複数人の目で現場をチェックする(森会長は写真手前)