農地利用の最適化最前線(10) 独自マニュアルで理解深める 山形・川西町農業委員会

山形県の川西町農業委員会(大沼藤一会長)が人・農地プランと農地中間管理事業を活用して農地集積を進めている。事業が始まってからの4年間で423ヘクタールを機構集積。この間、担い手への集積率を10%引き上げ、64%にまで伸ばした。
同町では町内全域を網羅する16地区で人・農地プランを策定。農業委員会が率先して策定に関わろうと、3年前にはプランの事務局を町の産業振興課から農業委員会へと変更した。これにより、プランの全体像や担い手の意向を把握しやすくなったという。農業委員と農地利用最適化推進委員は地区の会合に出席し、合意形成を主導する立場を担っている。
大沼会長(62)は「人・農地プランは単なる農地の貸し借りでなく、地域の将来像を見据えて作成するように求めている。地元と一緒になって考えていくことが大事だ」と話す。
水稲を基幹作物に、地区によって野菜や果樹、畜産などを組み合わせる同町では、地区単位で考えるプランこそが基本戦略だ。例えば、犬川地区では後継者の就農を促すため、基盤整備事業を進め、園芸作物の産地化で所得向上を目指す。玉庭地区は、玉庭放牧場を中心に米沢牛の生産拡大と繁殖素牛を増頭して、地域内循環農業や自給飼料の生産を拡大させる。こうした各地区の将来像がプランに記され、計画に沿った農地利用が進んでいる。
農業委員会は昨年の3月に新体制へと移行した。農業委員が10人、推進委員が16人となり、旧体制からは4人増員した。一方で、農業委員は半数近く、推進委員は3分の2が新任の委員。地域に入り込んだ活動を展開するには、経験不足が心配だった。
そこで活躍したのが両委員に配った業務マニュアルだ。事務局が作成し、農業委員会制度や各委員の役割、法令業務、農業者年金などを分かりやすく解説した。2カ月に1回程度、総会後に両委員合同の研修会を開き、委員のやる気を引き出した。
今年1月には独自の担い手アンケートを実施して、農地の利用意向を確認した。ここで分かった希望もプランに反映して、さらなる集積へとつなげていく。現在470ヘクタールの水田で進む大区画化も集積の追い風にしていく考えだ。
黒澤一利会長代理(60)は「どの地区も年1回はプランを見直すなど良い流れができている。この流れを続けるために、国には農地の受け手に対する支援と、今は町の助成によって成り立つプランの運営支援をお願いしたい」と声を上げる。
写真説明=機構集積に人・農地プランを有効活用する川西町農業委員会(大沼会長(左)と黒澤会長代理)