「農地バンク」軸に利用最適化を推進 愛媛・西条市農業委員会

農業従事者の高齢化と担い手の減少による遊休農地の増加が、全国各地で根強い問題となっている中、2016年に施行された改正農業委員会法により、農業委員会組織は「農地利用の最適化」として、(1)担い手への農地の集積・集約(2)遊休農地の発生防止・解消(3)新規参入の促進支援に、重点的に取り組むこととなった。西条市農業委員会(加藤茂会長)では、農地のあっせん活動を通じて農地の有効利用と遊休農地の発生防止・解消を目的に、「西条市農地バンク」を実施している。
西条市は、四国最大の経営耕地面積であり、裸麦や愛宕(あたご)柿、春の七草の生産量日本一を誇っている。水稲やメロン、ホウレンソウ、梅、バラなどの多品目の農産物でも生産量が県内1位に輝いているほか、採卵鶏や養豚などの畜産業も盛んな県内でも有数の農業地帯だ。
ただ、同市においても担い手の高齢化に伴い、農業従事者の減少が顕著になっており、土地持ち非農家の増加や農産物価格の低迷などで耕作放棄地が増加傾向にある。同市農業委員会には「農地を維持できなくなってきた」「誰かに借りてほしい」という相談が以前より寄せられていた。
そのような状況の中、改正農業委員会法の施行を受け、同市農業委員会は2017年12月より「西条市農地バンク」の運営を開始した。
農地バンクでは、申し出のあった貸し付け・売り渡し希望農地について、農業委員会が現地調査を実施。耕作可能で、登記や権利関係など、貸借や売買に支障がないと判断した農地について、ホームページなどで公表する。登録期間は3年間で再登録も可能だ。9月末現在で61筆の農地が登録されている。
農地を「借りたい」「買いたい」という規模拡大の意向がある農家や新規就農希望者らは農地バンクの利用を申し込み、登録された際に、本人の希望に添う農地の所有者などの情報が農業委員会より知らされる。
また、利用申し込みの際に、マッチング後は農地法か農業経営基盤強化促進法による権利の設定・移動について、農業委員会へ届け出または申請が必要な旨を伝えており、ヤミ小作の防止にもなっている。
農業委員会の担当者は「農地の利用集積を目的とした農地中間管理事業では、10年以上の貸し付けという要件がネックとなり、貸借に二の足を踏む人も多い。西条市農地バンクでは、10年未満の貸借を希望する農地も扱っているので、農地中間管理事業に合致しない案件の受け皿として、農地の耕作放棄・遊休化の防止につながれば」と、農地の有効活用に意欲を燃やす。
写真説明=地域の担い手に利用権設定され遊休状態が解消された農地