中山間地域 農業委員会の挑戦(2) 一丸となり遊休農地一筆解消運動 香川・三豊市農業委員会

香川県の三豊市では山間部の農地、特に畑の荒廃が大きな課題だ。同市農業委員会(堀江博会長)では昨年11月から「遊休農地一筆解消運動」を進め、農業委員と農地利用最適化推進委員の二人三脚での活動に注力。農地中間管理機構とも日常的に連携し、耕作放棄地の解消につなげる。
「この辺りは市内でも特に山深い。誰かが率先して荒廃化を食い止めていかなければ」。堀江会長(71)は山の斜面にあるクリ畑から地元の財田地区を見渡し、こう訴える。ここも元は耕作放棄地。同地区の農業委員・推進委員11人が一丸となって再生した。
同地区は香川と徳島を隔てる山脈の裾野に位置する。果樹やタケノコの生産が盛んだが、高齢化やイノシシ被害が深刻で、丘陵地を中心に耕作放棄地が増加している。同地区では両委員の定例会を毎月開くなど結束が強く、堀江会長の呼びかけに他の委員が共鳴し、クリ栽培による解消プロジェクトが始まった。
廃園となった柿の園地15アールを対象とした。地権者の意向を聞き取ったところ「整備してもらえるならありがたい」との返答があり、機構を通じて堀江会長が借り受けた。再生作業は今年1月から開始。11人で協力し、草刈りや雑木の伐採、根や岩の除去、重機での開墾、農道の整備などを進めた。2カ月にわたる作業を終え、3月上旬に約50本の苗を植えた。
定期的な圃場管理も委員全員が担う。荒れ果てていた農地がよみがえった姿に、地区住民からの注目も集まっているという。堀江会長は「まずは自分たちが地区をリードし、耕作放棄地解消の輪を広げたい。委員の任期は本年度いっぱいだが、もちろん活動は続ける」と力を込める。
同市の農地面積は田・畑いずれも約4千ヘクタールだが、耕作放棄地の状況には大きな開きがある。2016年は田が257ヘクタール、畑が1660ヘクタールと、畑が田の6倍以上だ。特に山間部に畑が多く、一度荒れると解消が難しい。吉田安宏事務局長は「だからといって何も手を打たなければ悪循環となるだけ。耕作放棄地を再生して収益につながるモデルが生まれれば、解消の機運が波及していく」と話す。
機構を通じて担い手に耕作放棄地を集積した例も多い。2013年には他町から同市に参入した農業法人が山間部の荒廃した桃園地8ヘクタールを借り受けて再生し、オリーブを作付けた。現在は13ヘクタールまで拡大している。こうした動きを支えるのが、機構のスタッフとして農業委員会事務局に常駐する農地集積専門員。農業委員会と常に情報交換し、円滑な集積に結びつけている。昨年度は42.5ヘクタールを転貸し、本年度も50ヘクタール近く積み上がる見込みだという。
写真説明=クリの苗を見守る財田地区の委員ら(堀江会長は右端)