中山間地域 農業委員会の挑戦(3) 「地区活動」でより現場に 福島・会津若松市農業委員会

 福島県の会津若松市農業委員会(梶内正信会長)が、新体制移行を機に始めた「地区活動」を活発化している。農業委員と農地利用最適化推進委員が連携して、地区の実情に応じた農地利用の最適化の取り組みを実施。中山間地域でも盛んな活動を展開中だ。
 標高500メートルにある湊地区の四ツ谷集落では、地区担当の4人の委員(農業委員、推進委員が各2人)が中心になって「人・農地プラン」の策定に向けた地域の合意形成を進めている。本年度は4回の集落会合を開き、プランの完成はあと一歩まできている。
 担い手の育成が遅れていた四ツ谷集落には認定農業者が1人だけで、隣接地域からの入り作が増えていた。営農条件を整えるために、農地耕作条件改善事業や農地中間管理機構関連農地整備事業などを導入しようにも、まずは担い手を明確にすることが必要だった。
 4人の委員は、入り作している集落法人も中心的な担い手に位置づけて、事業を有効活用するように促した。農業委員の星貴士さん(60)は「手を入れなければ遊休化する農地が出るかもしれなかった。農地を農地として活用できる環境を残したい」と話す。推進委員の小檜山祐一さん(62)も「集落だけでなく湊地区全体で耕作していくんだという絵姿を早く描き、地域を安心させたい」と続ける。
 湊地区は大区画化など基盤整備が進んだ水田地帯。地区農地の53%、610ヘクタールが農地中間管理事業を利用し、担い手への集積率は87.5%にもなる。ただ、圃場整備が遅れている集落では事業の活用が進んでなく、委員らは今後そうした集落でもプラン作りを促して、集積や事業活用へと誘導していく考えだ。
 星さんは「みんな土地への愛着は強いが、それでも年齢的に難しくなり、農業をやめていっている。そういう気持ちも酌みながら、農地を次につなげたい」と決意を示す。
 同委員会は昨年8月に新体制へ移行した。「下意上達の組織体制が必要」という梶内会長(66)の強い思いをきっかけに、旧町村単位を基本にした13班編成で地区活動を始めた。各班は月に1回それぞれ集まり、活動計画を検討。農地のあっせんや地域の実態把握、合意形成に取り組んでいる。総会後には活動の報告会を開き、全員で各地区の活動や抱える課題を共有する。こうした仕組みによって、より現場に入り込んだ活動が行われるようになった。
 梶内会長は「農業委員の本分は農業・農村を活性化すること。そのためには、両委員が垣根なく、一つの輪になって活動することが必要だった」と導入理由を話す。成果には「全員がよい活動をしてくれている」と目を細める。

写真説明=星さんら湊地区の4人の委員は全員が担い手だ