遊休農地解消や特産品 農委会の挑戦が実結ぶ エゴマ栽培で村に活気 福島・大玉村農業委員会
農業従事者の高齢化による遊休農地の増加が全国的な課題となっている中、水田地帯が広がる大玉村では、大規模活用が困難な畑の遊休農地が増加してきた。そこで、大玉村農業委員会(國分初男会長)では、村内の遊休農地を活用したエゴマ栽培を進め、遊休農地の解消と新たな特産品の創出による農業者の所得確保に取り組んでいる。
大玉村では、年々増えていく遊休農地をどう活用していくかが大きな課題となっていた。2009年からは耕作放棄地再生利用交付金などを活用し、伐根・整地するなど遊休農地の解消に努めてきたが、収益性の課題などからなかなか周囲には放棄地解消の機運が広がらなかった。そのため、同村農業委員会は2016年、所得の確保が期待できる新たな特産品としてエゴマの栽培を進めることとした。
まずは農業委員会が村内の遊休農地40アールでエゴマの試験栽培を開始。同時に村内農業者に向けて広報紙やホームページなどで協力者を募り、賛同した4人の農業者が約80アールの遊休農地を活用してエゴマの栽培を始めた。
試験栽培は、遊休農地を整地し、田村市船引町の「日本エゴマの会」より種子を購入するところから始まった。エゴマ栽培は皆初めてだったため、ポットへの播種から定植、成長時の栽培管理や収穫などの作業は、日本エゴマの会の指導を仰ぎ、栽培講習会を開くなどして技術を習得していった。
収穫したエゴマは、村食生活研究グループと連携して開いた料理講習会でエゴマの葉の包み焼き、エゴマあえ、エゴマ入りサツマイモのケーキなど、エゴマの調理方法を検討したほか、エゴマ油も試作した。
翌年には賛同者も増え、栽培面積は約1.3ヘクタールに拡大。同年9月には15人の農業者が「おおたまエゴマの会」を発足した。
今年は、エゴマ栽培で一番労力を費やす定植作業を軽減するため、農業委員会で試験圃場を拡大。直播栽培の実証を行った。
現在は農業委員会の試験圃場で70アール、おおたまエゴマの会会員の圃場で1.5ヘクタールほどエゴマが栽培され、全体で2.2ヘクタールの遊休農地解消に結びついた。
村ではこうした取り組みに全面的に協力している。エゴマ種子の購入費や試験圃場での栽培管理の経費を助成したほか、農業委員会やおおたまエゴマの会で活用できるよう、汎用(はんよう)コンバインや選別機、乾燥機、搾油機、製粉機などエゴマ加工に必要な機械を導入した。
収穫したエゴマは、おおたまエゴマの会で主にエゴマ油に加工し、村内の直売所で販売。今後は村とともに6次化や販路拡大を検討する予定だ。
農業委員会では、「林縁部でのエゴマ栽培はイノシシなどの有害鳥獣被害防止にも期待できる。村内の遊休農地ゼロの目標に向かって、引き続きエゴマの栽培を推進していきたい」と話している。
写真上=おおたまエゴマの会の皆さん
写真下=農業委員会が設置した試験圃場