中山間地域 農業委員会の挑戦(6) 農業改良組合長と連携し活動 岐阜・高山市農業委員会

 面積が日本一広い岐阜県高山市は9割を森林が占める中山間地域だ。機械利用が難しい小規模な農地や飛び地など、農地の集積・集約が難しい土地も多くあり、地域によっては担い手がいないことも課題となっている。
 高山市農業委員会(鴻巣明久会長)は、昨年7月に農業委員19人、農地利用最適化推進委員45人の新体制に変わった。両委員は5地区に分かれたブロック会議で、どのような活動をしていくのか、農地の貸し借りを進めるに当たりどうしたら良いかなどの話し合いを進めている。
 今年の新春にかけては、農業改良組合などの会議に参加し、農地のあっせん活動の説明や、気楽に相談に足を運んでほしいと呼びかけてきた。
 同組合は集落に割り振られた転作や用水管理への対応を地元で考えるために設置されている任意組合で、主に町内会などと同じ範囲で組織する。同市には200人以上の組合長がおり、同組合の会合には基本的に集落の全農家が集まる。
 今年は、毎年実施している貸し借りの意向調査結果のうち農業委員会が活動に利用することの承諾がある貸し付け希望の情報を両委員が共有し、借り手を探す取り組みを始めた。場所によっては、借り手が望めない農地も含まれるが、耕作条件の良い農地は結びつけも進みつつある。
 トマト栽培が盛んな丹生川町町方上野団地(13.2ヘクタール)では、委員会が所有者36人の114筆を全筆調査し、貸借契約の一覧表と担い手ごとの集積計画を作った。同団地では、高齢者や後継者のいない地権者から担い手に農地を集積していき、地域の農地を守っていく考えだ。その手始めとして、10年後には36人の耕作者が25人となる見込みだ。本年度は用排水施設・農道の整備や農地のかさ上げなどを実施した。
 委員会では、市や県などの関連機関と協力して新規就農者の育成や発掘にも力を入れている。就農希望者には、就農時に最も課題となる農地を手に入れられるように、間に入ってマッチングしている。
 市が行う就農体感ツアー参加者で意欲のある就農希望者には、長期研修を勧めるほか、研修から就農後のフォローアップまで連携して取り組んでいる。鴻巣会長(63)は「参加をきっかけに移住につながったケースもある。1人の100歩より、100人の1歩が大事。地域全体で市の農業を盛り上げたい」と笑顔を見せる。

写真説明=担い手に集積された農地には、今度雨よけハウスが建つ予定だ(鴻巣会長)