魅力ある産業に 農業への声集約 栃木・那須塩原市農業委員会

 生乳産出額本州一を誇る那須塩原市は、約9640ヘクタールの農地面積を有し、酪農のほか水稲や高原野菜などを中心に多様な農業が展開されている。一方で、市の就農人口の平均年齢は63歳を超え、農業者の高齢化が予想されている。そうした状況の打開に向け、2017年に新体制に移行した那須塩原市農業委員会(君島良一会長、農業委員20人、農地利用最適化推進委員44人)では次代の農業を担う就農者を支援・育成するため、広く「農業に関する声」を集約することを目的として、高校生との意見交換を実施している。

 同市農業委員会のうち、14人の農業委員で構成している農業振興対策調査研究委員会(石清委員長)は、担い手の育成、農地の集積など、農地利用の最適化に向けた活動を展開している。
 そうした中、「農業従事者の高齢化」が喫緊の課題となっている。委員会は市の「農業」を将来にわたり、さらに魅力ある産業とするため、「新規就農戦略」の策定に取り組んでおり、「農業に関する声」を集約することが必要と考え、県立那須拓陽高等学校の農業・家庭系の生徒と意見交換会を2回開いた。
 活動を開始したのは2017年11月。那須農業振興事務所と連携し、市の新規就農の現状を確認した。その後、2018年3月に1回目の意見交換会を実施。県立那須拓陽高等学校生13人と農業委員12人が参加し、高校生が1人ずつ就農者に発信する情報の内容や発信方法などについて意見を発表した。
 2回目は昨年7月に実施。同校生7人と農業委員8人が、「稲作・畑作」「畜産」「その他6次産業化など」の高校生の関心に応じた三つのグループに分かれ、将来の農業に対する不安や希望について対談した。
 意見交換の中では、「漫画やアニメを用いて市の農業をPRする」「独自のブランドを作る」といったアイデアのほか、「農薬や農業機械の扱いが不安だ」「信頼されるような高品質な野菜を作っていきたい」「加工品や、皮ごと食べられるような現代の人が食べやすい果実を作りたい」といった就農に向けた目標や不安を具体的に考えた意見も出た。
 これらをまとめ、委員会では戦略の策定とともに、情報の収集・発信方法や、技術・経営力の習得など親元新規就農に向けた具体的な取り組みについても検討している。
 また、昨年7月から今年の3月まで農地所有者の意向を確認するため、推進委員が中心となり、市内在住の農業者約2800人を対象に戸別訪問による農地利用に関するアンケートを独自に実施し、結果を集計して農地利用地図の作製を始めた。今後は地図を利用した担い手へのマッチング活動も推進していく予定だ。
 同市農業委員会では今後も高校生と意見交換を実施し、農業者や農業関係団体、観光・商工関係団体などと連携して新規就農支援活動を行っていく。

写真上=高校生との意見交換

写真下=農地利用最適化推進に向けた話し合い