担い手支援へ 取り組み多彩 和歌山・田辺市農業委員会

戸別訪問を行う青木登農業委員(右)と片山達夫推進委員

 田辺市は県の南部に位置し、温暖湿潤な気候を活かした果樹栽培が盛んな地域だ。全国有数のウメの産地として知られている。田辺市農業委員会(瀧本和明会長・農業委員19人、農地利用最適化推進委員26人)では、農業振興課と共同で実施した農地所有者へのアンケート調査や農業者年金の加入推進活動により、担い手支援に向けた多彩な取り組みを強化している。

 上秋津地区をモデル地区として、同地区の農地所有者584人を対象に「農地利用意向アンケート調査」を行った。これは、同市で規模拡大を希望する農業者グループから「農地の情報を知りたい」との要望から実現したもの。
 同市農業振興課と共同で実施し、法定の意向調査では表面化しづらい「現在は耕作しているが、いずれ耕作者がいなくなると見込まれる農地」などを明らかにし、農地を流動化させるのが狙いだ。
 調査は一次調査と二次調査に分け、いずれも郵送で調査票を送付。今年2月に実施した一次調査では、所有農地の利用意向や拡大の意思、後継者の有無についてアンケートを行い、334人から回答があった。
 そのうち、約半数の157人が「全て耕作する」という意向を示した一方、「貸したい」意向が50人(15%)、売りたい意向が65人(20%)となり、厳しい現状が浮き彫りとなった。
 また、7月から8月末にかけて二次調査を実施。「貸したい、売りたい」と回答した者を対象に、具体的な農地の地番などの情報、農地中間管理機構やJAなどの関係機関との情報共有、全国農地ナビでの貸し付け意向の公表の可否について確認した。二次調査の結果は今年中に集計し、農地の流動化につなげる予定だ。

 同委員会は農業者年金の加入推進活動も精力的に展開している。
 2017年度の新規加入者数は4人だったが、2018年度は35人が加入。昨年度の新規加入者数全国第3位の実績となった。
 昨年度は10月から12月までを加入推進月間に位置づけ、農業委員・推進委員の意見を踏まえつつ市内全域の加入推進名簿を整備。
 とりわけ、地域の担い手となる若い世代の農業者などを対象に戸別訪問を実施した。訪問時間は農作業の合間の昼休憩時間とするなど、推進される側の立場にたった工夫も欠かさなかった。
 瀧本会長は「さまざまな手法で担い手を支援し農地利用最適化につなげたい」と話す。