帰村率2割の村を復興へ 農委会と東大のサークルが連携 福島・飯舘村農業委員会

 原発事故により全村避難を余儀なくされた飯舘村。2017年3月には避難指示が解除されたものの、現在の帰村率は約2割だ。このような中、農業委員会(菅野啓一会長)と東京大学の学生が復興に向けた村おこしに乗り出している。

東大むら塾メンバーと農業委員会

 東京大学のサークル「東大むら塾」は農業委員会の支援のもと、月に2回ほど同村で活動している。今年の7月には菅野会長(64)の所有する農地6アールにソバを播き、先日約50キロを収穫した。農作業は可能な限り手作業。農業者にとっては大変だと感じることも、学生たちは楽しそうに取り組んでいる。
 むら塾では90人超の学生が農業を通した村おこしに取り組む。そのうち約10人が「飯舘村プロジェクト」に取り組み、首都圏の学生を始めとして全国に村の魅力を発信するべく活動中だ。
 プロジェクト代表の藤田太郎さん(22)は「地域に継続的に関わり関係を構築する中で、若者の視点から村の魅力を発見・発信していきたい。私たちの活動がきっかけとなり村に関わる人や帰村を考える人が増えてくれればうれしい」と思いを語る。
 この活動が始まったきっかけは、震災直後から復興支援に関わってきた東京大学の溝口勝教授からの提案。「学生たちの村を活性化したいというひたむきな気持ちを受け止めたいと思った」と菅野会長は話す。

 震災から8年が経過したが、約2500ヘクタールの農地のうち、復旧したのは3分の1未満。基盤整備を進めているものの、全ての工事が終わるまではかなり時間がかかる見込みだ。時間の経過とともにかつての農業者が高齢化し、復旧が難しくなると懸念されている。
 菅野会長は「原発事故からの復興は短期間でできることではなく、長い目で考えるべき課題。子は親の背中を見て育つと言うが、今自分たちが頑張ることで、後に続く農業者が出てきてくれれば」としたうえで「村民には頑張っている若者の姿を見て、自分たちも頑張ろうと奮起してほしい」と呼びかける。
 来年以降、遊休農地を活用してソバの作付面積を拡大していく予定だ。また、むら塾の看板とともに景観作物を幹線道路沿いに植え、村民に活動のアピールもしていく。将来的には商品開発など活動の幅を広げていく意向だ。