新生農委 放棄地の解消と発生防止 岩手・大船渡市農業委員会

 岩手県大船渡市。いまだ東日本大震災の傷痕が残る同市では、農業委員会(鈴木幸雄会長)が中心となり被災農地などへツバキを植えている。耕作放棄地の発生を未然に防ぎながら、ツバキの産業化に向けて精力的に活動。復興へ歩む市に花と明るい話題を届ける。
 活動は2013年に開始。これまで1.1ヘクタールで植樹し、耕作放棄地の解消と発生防止に役立てている。
 農業委員は自ら植樹するほか、小中学校などの植樹・収穫ボランティアの指導員としても活躍する。昨年までに植えた苗木は1600本以上。今年度も、同県農業会議が定める7月15日の「農地の日」の植樹会には委員全員が参加し、約500本を植える予定だ。
 「椿の里」とも呼ばれる同市にはヤブツバキが多く自生し、市の花にもなっている。昨年から同市はツバキを利用した産業の育成に乗り出した。そのためにはツバキの本数や実の確保が一番の課題。農業委員会の植樹活動は産業化の土台として期待されている。
 植樹する土地は農業委員会で探して所有者に交渉する。活動当初は維持管理の難しいツバキの植樹を断る所有者が多かったが、委員らの真剣な姿に現在では自ら「植えたい」という所有者が増えてきた。
 細谷真実事務局長補佐は「産業化のメリットの根気強い広報と、耕作放棄地を解消する委員さんの頑張りのおかげ。地域一丸となって復興に向かう雰囲気を醸成するのが重要」と話す。
 同市農業委員会では農地パトロールと兼ねて、自生するヤブツバキの分布調査も行う。明治大学の学生も調査に協力し、これまでに約8千本のツバキを特定。生息分布図を作成し資源量の把握にもつなげている。
 昨年度からは搾油に向けた実拾い作業も始めた。農業委員をはじめ幅広い年代の地域住民が参加し、1年間で約200キロの実を採取した。ツバキは1キロの実から250グラムの油が搾油可能。農業委員会でも商品化への機運が高まっている。
 鈴木会長(69)は産業まつりなどでツバキの宣伝を買って出た。「イベントではにぎわいがあり、協力してくれる人も増えている」と手応えを感じている。現在、同市にはツバキ活用のコーディネーターが常駐し、地元の女性たちを中心にツバキがモチーフの雑貨を手作りして販売するなど、産業化の波は着実に広がる。その下支えとなる同市農業委員会の活動はこれからも続く。(随時掲載)

写真説明=ツバキの成長を見守る鈴木会長