都市農業の保全に全力 市民や議会に魅力発信 東京・日野市農業委員会

 日野市農業委員会(遠藤貴義会長)は、援農ボランティアの育成などで都市農業の魅力を市民に発信するとともに、市議会に都市農業の重要性をアピールして振興を図るなど、都市農業の保全に向けた体制づくりを進めている。

農の学校でのネギの定植
農の学校での 集合写真

 日野市は、東京都のほぼ中央に位置し、ナシやブドウの生産地として有名で、市内には100以上の個人直売所がある。一方で農業の担い手の高齢化に伴う労働力の減少が課題となったことから、農業委員会の建議により援農ボランティアの養成講座「農の学校」を2005年に開講した。
 市が約10アールの農地を借り入れて実習農場を開設し、農業委員をはじめとする講師26人が4班に分かれて野菜の栽培指導をするもの。現在までに244人が講座を修了し、市内の45戸の農家で援農活動に励んでいる。
 受講者と農業者のマッチングは、農の学校の卒業生で構成される「NPO法人日野人・援農の会」と市、JAが連携して行い、調整しながら農家と市民が心地よく働くことができる環境づくりを進めている。

遠藤会長

 同委員会では、毎年9月に市長への意見の提出を行っている。今年も副市長を交えて意見交換し、要望の具体的な内容は農業委員が説明した。要望には各課から回答をもらい、具体的な施策の実現につなげている。
 また、市議会と都市農業の振興に向けた共通認識を持つことを目的に、農業委員と市議会議員との合同農地視察研修を開催し、実際に市内の農地を見て意見交換している。参加した議員からは「都市農地は農業生産のみならず、まちづくりの視点からも重要なものであると認識した」などの意見が出された。
 そのような働きかけが実り、2017年に超党派の「日野市議会都市農業推進議員連盟」が設立されるなど、都市農業の振興に向けた意識が醸成されている。
 遠藤会長は「特定生産緑地制度や都市農地貸借円滑化法など、都市で農地を残すための選択肢は増えている。制度の周知と有効活用を徹底して、多くの農地が残るようにしていきたい」と話す。
 同市は、全国で初めて、新規就農者が都市農地貸借円滑化法を活用して生産緑地を借りて農業経営を始めるなど、都市農業の先進地としても注目されている。